また,ニューヨークで飛行機が落ちた。今度は住宅街のど真ん中である。乗員,乗客,それに住民と260人を超える方が犠牲になった。今回の事故はテロとの関連がなさそうだ,というのが今のところの米国政府の見解だが,これが事故であるとすると,また,困った問題である。安全であるべき航空機になぜ,機体トラブルが発生するのか。テロの後に経営が危うくなった航空会社が,まさか整備の手を抜くことはあるまいが,厳しく原因を究明してもらいたい。

 航空業界は20世紀終盤に規制を緩和した米国の代表業種だ。多数の航空会社が誕生し,激しい競争状況に突入した。同じ路線でどちらが安いか,これを比較するパソコン通信サービスも現れ,インターネットが社会に浸透する以前から,ネットで格安チケットを予約する習慣をユーザーにつけさせた。この付近で航空会社の体力差が現れて,中小航空会社の経営行き詰まりが表面化した。このころ,競争に後れをとった航空会社の整備不良と思われるトラブルも頻発し,事故も一時期,多発した。

 ネットワークを利用した競争として,航空会社側は利用距離に応じて割戻しサービスをする「マイレージ」のサービスを導入して顧客の囲い込みを図った。このサービスは「ポイント制度」として,他の業種にも幅広く普及したが,本家本元の航空業界は,弱肉強食のさらに激しい競争状況に突入させられたのは,確かである。しかし,このサービスは航空会社と乗客の距離を縮めて,飛行機を気軽な移動手段として,社会にさらに深く浸透させる効果は大きかったと思う。

 さらにインターネットは航空業界に過酷な競争を持ち込んだ。購買者側を代表する購買代理店のビシネス・モデルを創作して,乗客側から値段を提示して,航空会社に安値を競わせる,という「逆競り」の市場を生んだ。これで航空会社の収益力が大きく低下したのは否めないだろう。

 そこへ9月11日の同時多発テロである。航空業界は乗客減の大ピンチを迎えた。今回の事故がテロでなく,機械トラブルであるとしたら,さらに,航空サービスへの不安が広がるだろう。航空会社の信頼回復の打開策は何か。かつて,マイレージ・サービスのような新しいビシネス・モデルを編み出した航空会社である。ITを活用したアイデアを駆使して,再び乗客との絆を深くして,ぜひとも復活してもらいたいものである。ITの大きな貢献を期待している。

(中島 洋=日経BP社編集委員)