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 技術者人材派遣のメイテックが堅調に事業を拡大している。連結売り上げは650億円規模で,技術社員の稼働率(顧客企業に派遣されて勤務中の技術者の比率)も95%前後を維持している。

 メイテックの武器は,十分に訓練された技術者と顧客ニーズを素早くマッチングさせるシステムにある。その前提となるのが,「技術者が市場における自分の価値を強く意識する」ための仕組みだ。

 西本甲介社長は次のように説明する。「市場価値を定量的に把握することが我々のビジネスの重要なポイント。上級研修である『アドバンス研修』の受講者が倍増するなど,目に見える効果が出始めた」。自分のキャリアを磨きたいという技術者の気持ちと,必要に応じて適切な人材を使いたいという企業ニーズをうまく橋渡しているのである。

 そのほか最大手のパソナから新規参入組まで,人材派遣業の多くは業容を拡大している。「人材の流動化は日本では難しい」と言われて久しい。だが,人材派遣業の堅調ぶりを見ると,通常の転職とは違った形態で流動化は既に本番を向かえているのではないか。

ITスキル・スタンダードを模索

 ITプロフェッショナルの人材流動化について考えてみよう。これを加速する要因には,企業再編の大波とスキル・スタンダードの確立が考えられる。CSKの有賀貞一副社長は,「人材派遣的文化の高度化を目指して久しいが,ようやく安定的な成長軌道に乗った。とりわけ製造業における業容が拡大している」という。

 有賀氏は証券業向けのシステム開発・運用会社である日本フィッツの副社長も兼務している。日本フィッツは証券業界におけるシステムのデファクト・スタンダードを狙っている企業である。そのパワーの源泉は旧・山一証券グループから移ってきたITプロフェッショナルたちだ。「人材を通して知識やノウハウが売れる時代だ。もの作りだけではなく,知的EMS(製造受託サービス)は十分に成立する」(有賀副社長)

 若手ITプロフェッショナルにとっては,「どの企業に所属したら自身の市場価値が高まるか」という視点が欠かせない。と同時に,今後は新しくIT業界に入ってくるニューカマーの存在がポイントだ。

 人材の需給が逼迫しているIT市場では今,「未経験者でも教育してあげるから欲しい」というムードが高まっているという。だが,かつてソフト・バブルが弾けたとき,文系出身「にわかSE」の多くが職を失った。今度こそ,きちんとしたスキルを教育し,評価する枠組みが欠かせない。

 経済産業省はIT技術者がソリューションを提供できるだけの素養を備えるための「ITスキル・スタンダード」を策定中である。具体的なスキル定義や教育カリキュラムの実現には時間がかかりそうだが,現実的な内容に仕上がれば若手のキャリア・アップに貢献する可能性はありそうだ。

今時のキャリア・アップとは

 人材の流動化が進むなか,正社員の活用法も当然クローズ・アップされる。企業経営の重要なキーワードとして「人材活用」を上げることに異論を唱える人はいないだろう。ただ,概念的には分かっていても,実践できないで経営者が大半ではないか。

 日経情報ストラテジーが英フィナンシャル・タイムズ紙と提携して出版した『ピープルマネジメント』には,社員のスキル・アップに関する最新トレンドが掲載されている。

 その中で注目されるのが,「ピープル・スコアカード」である。従業員の業績を数量化して評価するためのシステムだ。『ピープルマネジメント』の中では,米国とドイツの200社以上を対象にピープル・スコアカードを適用して分析し,事例を交えた結果が報告されていて興味深い。ピープル・スコアカードは業績や株価および従業員の忠誠度と連動している。問題は,こういった取り組みを経営の現場で実践できるかどうかだ。

 従業員自身もキャリア・アップの答えを見いだせないでいる。IT業界に身を置く人たちのキャリアアップについて,前出のCSK有賀副社長は次のように話す。「メーカー主導の資格試験は一巡したが,その結果として技術者がキャリア・アップしたかどうかは分からない。システム構築の根本にかかわるスキルを身に付けた技術者はまだ少数だ」。情報処理技術者試験は時代の流れに沿って変化しており,若手ITプロフェッショナルのキャリア・アップに関する指標として見直されるべきだろう。

IT畑を歩んだ経営トップも急増

 若手ビジネス・パーソンにとって,マネックス証券の松本大社長は参考になる人物だろう。松本社長は3年前に米大手証券会社の要職を飛び出して,ネット証券のマネックス証券を立ち上げた。先日,IT Proの「リアルインタビュー」に応じ,若手ビジネスマンに次のように語りかけた。

 「自分の境遇をなげいて,やる気を失う若者は少なくない。だが野球と同じで,どんな人にも必ずやストライク・ボールがやってくる。問題は,好球が来たときに打ち返せるかどうかだ。普段の素振りを怠ってしまっては打ち返せない」

 ITプロフェッショナル出身の経営トップが増えていることにも注目しておきたい。以前は,IT畑を歩んだCEO(最高経営責任者)といえば,シティーコープのジョン・リード元会長くらいしか思い浮かばなかった。ところが今は,CIO(情報戦略統括役員)を経て経営トップまで登りつめる人材は珍しくない。

 日本では,セコムの新社長である木村昌平氏が長年IT関連の実務に携わってきたし,東京海上火災保険の石原邦夫社長はCIOから経営トップになった。米国では,日本に進出するウォルマートのリー・スコットCEOが15年もの間,ロジスティックス(物流)の専門家として活躍したという。当然,ITの実務ノウハウは豊富なはずだ。

(上里 譲=コンピュータ局編集委員)