Web3Dという技術をご存知だろうか。Webブラウザ上に3次元オブジェクトを表示し,マウスなどを使って回転させたり,拡大したりできる技術である。昨今,自動車や電化製品などの商品紹介や,住宅案内のWebページなどで多く利用されているので,目にしたことがある方も多いのではないだろうか。

 こういったWeb3D技術が充実してきており,それらを使ってWebサイトを“豊か”にしたい。ブロードバンド・ユーザーが増えている今だからこそ,活用したい技術である。

 たとえば,ECサイトなどで,商品のアピールに,またはサイト内の案内役にWeb3Dを利用してみてはどうだろうか。商品を3次元CGで再現すれば,ユーザーはその商品にどんな特徴があるのか,確認しながら買い物ができる。また,キャラクタの案内があれば,必要な情報を探してサイト内で迷ってしまうこともない。それに,楽しいWebサイトを演出できる。

 実際,コンテンツ制作会社やインテグレータがWeb3Dに力を入れ始めている。昨年,米Viewpointの製品をケイ・ジー・ティーが,スウェーデンにあるCycoreの「Cult3D」をベースにした製品を三洋電機ソフトウエアが,国内総代理店として販売を開始。さらに6月3日に日商エレクトロニクス米QEDSoftの製品の国内販売を6月3日に始めた。日立製作所NECも,Web3Dコンテンツ制作サービスを開始している。

バラエティに富むWeb3Dの製品・技術,向き不向きを見極めることが重要

 ただ,Web3Dといってもさまざまな技術,技術があり,それぞれ向き不向きがある。国内で利用されているだけでも数十種類を数える。それぞれ表現力や実現できる機能が異なる。光沢など本物に近い質感を出せるものや,3次元空間を表現できるもの,サーバー上のアプリケーションとデータのやり取りが可能なものなど――。これらを適材適所で利用すれば,魅力的なWebサイトが作れるはずである。

 たとえば米Viewpointの「VET(Viewpoint Experience Technology)」は,Web3Dのオブジェクトの質感をきめ細かく表現できるという特徴がある。CG(コンピュータ・グラフィックス)では粗くなりがちな曲面や,陰影などを高精細に描画する。商品の内部を見せるために表面だけを透過させたり,表面の色をユーザーの操作に応じて変えたりすることも可能である。

 Cult3Dにも同様の機能があるが,さらに煙や炎といった固形物でないものも3次元CGで表現できる。VET,Cult3Dとも,商品紹介のWebページなどで多く利用されている。比較的動作が軽いのも特徴である。

 一方,3次元のアニメーションを活用したいなら,米QEDSoftの製品が向いている。WebサイトをナビゲーションするキャラクタをWebページ上で動かす。ページ遷移に合わせて,しゃべる内容や動きを変えることができる。Webサイトを利用しやすくなるのに加え,キャラクタとの会話を楽しめるためアクセス増も期待できる。ECサイトや,サービス紹介のWebサイトなどで利用されている。

 マクロメディアの「Shockewave3D」もアニメーションに使える。ゲームなども作成できる。物理シュミュレーション機能を使って3次元空間での動きがリアルに表現可能だ。たとえば,ある3次元オブジェクトが落下させたときの跳ね返りや,斜面で転がしたときの動きなどを,物理法則に合わせて計算してくれる。

 これらWeb3Dコンテンツの多くは,3次元CGを作成するところから制作を始める。しかし,CADデータからWeb3Dオブジェクトを生成可能な技術もある。ラティス・テクノロジーの「XVL(eXtensible Virtual world description Language)」は,CADデータを扱うツールが多くサポートしている技術である。圧縮率に優れており,数百MバイトのCADデータでも数十KバイトのWeb3Dコンテンツに変換する。企業が商品のWeb3DコンテンツをWebサイトに掲載する際にこのような技術を使えば,いちからオブジェクトを作成しなくても,手早くWeb3Dコンテンツが作成できる。

 レクサー・マトリクスの「eReality」のように,ほかのシステムと連係する機能を備えているものもある。ユーザーが何をクリックしたかといったデータを,Web3Dから専用のサーバー・アプリケーション「eReality Server」が収集する。そのデータをECサイトに渡し,レコメンデーションやパーソナライズといった販売促進に役立てるといったことが可能だ。住商情報システムはこのeRealityを,自社で開発したポータル・サイト構築ツール「SCSモバイルポータル」に組み込んで出荷している。

課題は標準化が進んでいないこと

 このように,多様なWeb3D技術をうまく使えば,魅力的なサイトが作れる。ただし,問題もある。Web3Dは,Webブラウザだけでは見られないということである。Web3D技術ごとに,別々のプラグインを組み込まなければならない(ただし,NECの「BIGLOBE Web3D」で使われているヤッパの「ヤッパ・テクノロジー」のように,Javaを利用するWeb3D技術もある)。

 Webサイト側は,それぞれのサイトの特性に合わせて,Web3D技術を1つ選べば済むかもしれない。しかし,ユーザーはそうはいかない。

 米国ではWeb3Dコンソーシアムという団体が設立され,Web3Dの標準化を進めている。2002年2月に,VRML(仮想現実モデリング言語)の後継技術「X3D」を発表したが,動作が重く,機能的にも不十分で,ベンダーなどの賛同は得られていないようである。“Web3D技術ごとに別々の動作環境が必要”という状況は,当分続きそうである。

(福田 崇男=日経インターネットテクノロジー編集)

【追記:6月24日18:20】
記事掲載時点では,末尾からの3つの段落で
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Web3D技術ごとに,別々のプラグインを組み込まなければならない。
・・・
“Web3D技術ごとに別々のプラグイン”という状況は,当分続きそうである。
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と記載いたしましたが,独自のプラグインではなく,Java VMを利用するタイプの技術もございます。この点をふまえて,当該個所を現在表示されている文章に変更いたしました。
以上,おわびして訂正いたします。