パソコンの店頭市場が厳しい。例年ならば夏商戦の盛り上がりを見せるはずの6月は,販売台数,金額とも前月の実績を下回るという異例の事態になった。

 ところで,店頭でパソコンを購入する人のうち,初めてパソコンを買うという人はどのくらいの比率かご存知だろうか。今年の夏商戦,前回の冬商戦では,その比率は2割を下回っているという調査結果がある。ほとんどが買い替え,あるいは買い増しをする人たちになったのである。今後のパソコン市場を考える上で,パソコン購入者のこの変化は見逃せない動きである。

 こうした状況のなかで,改めてパソコンのメーカー・サポートが注目されるに違いない。購入者はほとんどがパソコンの既存ユーザーである以上,これまで使っていたパソコンがトラブルに見舞われたときのメーカー・サポートの経験が新製品選択の重要なファクタになる。

 顧客ロイヤルティを引き上げてリピータを増やすには,サポートの充実が欠かせない。後述の調査によると,パソコン・メーカーのサポートを経験した人のうち,「サポートが良かったから,次も同じメーカーから購入する」という人は19.1%。前年調査の17.2%からジワリと上がっている。

「有料化を認めてもよいが,前提がある」

 パソコン・メーカーもサポートに力を入れ始めた。ただしコストがかかる。製品価格に上乗せするのは難しい。サポートを手厚くすると同時に,サポートの有料化を定着させたいところだ。しかし有料化を進めようとすると,数々の難問が立ちはだかる。

 「日経パソコン」と「日経マーケット・アクセスが共同で実施した「パソコン・メーカーのユーザー・サポート調査2002」の自由意見欄(記事末の注を参照)を読むと,改めて,パソコンという商品の特殊性が浮かび上がる。“電話サポートの有料化”についての意見欄から,その一端を紹介しよう。

 むろん「有料化には絶対反対」という声が多い。ただし,「有料化はやむなし」とする声も少なくない。「有料化にするのは良いというか仕方ないこととは思うが,それに見合った・・・(中略)・・・改善,教育をしてほしいと思う。」(20歳代,男性,会社員)。「法律相談に対する弁護士の有料化,パソコン専門家に対するトラブル解決・相談,いずれ有料化は避けられないと思います。(無料)サービスも限度があると考えた時,自己責任態勢を個々に持つ必要があると思います。又,時代の要請でもありましょう。ただ,有料化した場合はサービス面でも改善の必要があると思う」(70歳以上,男性,無職)

 大枠として,有料化を受け入れる素地はでき始めているようだが,「やってもよいが,その代わり・・・」とただし書きが付く。

 大きな壁は,メーカーの責任範囲はどこまでかという問題になる。「ユーザーのスキルの度合によって電話サポートには様々な質問があると思われるので有料化もやむを得ないと思われるが,メーカーの責任となる範囲までも有料となると残念である。その線引きが必要」(40歳代,男性,会社員)。「・・・明らかにユーザーの責任という場合は,有料もやむを得ないが,すべてにおいて有料というのは,メーカーが製品に対する責任を回避していることになる」(30歳代,男性,会社員)。「有料化自体には反対ではないが,パソコン自身の不具合のサポート有料化は反対である。製造者責任についても最後まで責任を持ってほしい」(40歳代,男性,公務員)

 さらにメーカーが有料化の前に果たすべき責任として多くの人が指摘するのは,マニュアルやホームページで提供する情報が,現状では購入者に対して必要十分な内容になっていないという点である。

 「電話サポートを利用するのは,マニュアルが不具合だから,わかりにくいからである。有料化する前に,マニュアル等を十分整備する事が必要である」(40歳代,男性,会社員)。「有料化するならば,誰が見ても分かるようなトラブル解決マニュアルが添付されることが必要。それができないなら安易に有料化すべきではない」(30歳代,男性,公務員)。有料化はいいが,その前にユーザーが自分で解決できるようにハード・ソフト・マニュアル等あらゆる面で十分対策をとっていただくことが前提です。容易な有料化には同調できません」(60歳代,男性)

 本来はメーカーが公開しておくべき情報を尋ねるのに金をとられるのは許せないというわけだ。

 明確な料金体系も求められている。メーカーの責任範囲とユーザーの責任範囲を切り分けて,なおかつ「単なる問い合わせで有料になるのはかなわない。トラブルが解消した場合だけ支払うのは分かる」という声がある。ただしそうすると,「解決しなかったら金を支払わなくていい制度であると,(電話では)ふざけて「解決しない」と言って料金を免れる恐れがある」(19歳以下,男性,学生)という複雑さだ。

パソコンはやはり家電ではない

 このように,パソコンのサポートを正面から有償化しようとすると,様々な問題が浮上する。「パソコンも家電」と言われて久しいが,実は従来型の家電とは大きな隔たりがある。パソコンを何に使うかはユーザー個々で違い,その結果,トラブルに見舞われても,それが故障なのか,使い方を知らないだけなのか,ハードが悪いのかソフトの問題なのか,なかなか見極めが難しい。

 さらにメーカーの責任という点で難しいのは,OSやアプリケーション・ソフト,周辺機器の問題だ。ユーザーからすれば,メーカーに窓口としてすべての対応をしてほしい。しかし現実には,「たらい回しされた」という声が多い。「・・・それは相性の問題で・・・」などと説明してしまうような現状では不満は解消されない。

 これまでの家電製品であれば,利用シーンは明確であり,製品の仕様を詳しくは知らないユーザーでも「壊れた」ことを判定できた。問い合わせは無料だが,保障期間を過ぎれば修理は有償というコンセンサスがとれた。

 しかしパソコンはそうはいかない。汎用のコンピュータであるという見せ方を崩していない。これが,一般消費者にはメーカーの責任はどこまでかという境界をおぼろげにする。しばらくは,サポートの有料化に関しては試行錯誤が続くことになるだろう。「やはりパソコンは家電とは違って」という言い方が増えそうな気がする。 

(松永 憲男=日経マーケット・アクセス)

■注
調査は2002年2月~4月に実施した(分析記事は日経パソコン2002年6月10号の特集参照)。回答者はメーカー・サポートの経験者2101人。このアンケート調査の自由意見欄に寄せられた延べ6400件の声を有償で提供している(こちらを参照)。さらに自由意見だけでなく,アンケートの全集計を収録した報告書も提供している(こちらを参照)。