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 実を言うと,記者自身も以前はタイムマネジメントについてそんな印象を持っていた。しかし「多忙だが期限に遅れない」,「仕事が早い」といった評価を周りから受けているITエンジニアやコンサルタントに話を聞いて回ると,決して精神訓話ではない「テクニック」が次々と浮かび上がってきた。先に挙げた「その日にやり終えるべきことを前日にリストアップする」がその1つ。それ以外にも,「自分で締め切り効果を演出する」や「1日の時間の使い方を分刻みで計測する」などがある。

 そうしたタイムマネジメントのテクニックは,大きく4点にまとめることができた。大まかには,「(1)すべてのタスクを漏れなく洗い出す」,「(2)すべてのタスクについて実行日時を決めておく」,「(3)集中できる時間,場所,プレッシャーを作り出す」,「(4)タスクの予実管理で仕事術を継続的に改善する」である。

 このうち(1)は事前準備であり,(2)~(4)はそれぞれPDCAサイクルの「Plan」「Do」「Check&Action」に相当する。つまりタイムマネジメントを実践することは,仕事術のPDCAサイクルを回すことにほかならない(これが(4)の内容になっている)。いわば,自分の仕事の能力を継続的に向上させる取り組みなのだ。

根性ではなくテクニック

 日経ITプロフェッショナル2月号(2月1日発行)で,「タイムマネジメントの技術」と題した特集記事を書いた。その過程で強く感じたのは,「時間欠乏症」はタイムマネジメントによってかなり克服できるということだ。処方箋は,根性ではなくテクニックである。

 もちろん「仕事を早く終えるとすぐに別の仕事が降ってくるから,タイムマネジメントに取り組んでも仕方がない」というITエンジニアの方も,少なからずいるかもしれない。しかしそんな場合でも,あえてタイムマネジメントに取り組んでほしい。

 タイムマネジメントを実践すれば,何日分の仕事量を抱えているか,時間の余裕がどれだけあるかといった客観的な情報を上司に示せるようになる。そうすると理不尽な要求を断れる可能性が出てくるからだ。少なくとも,与えられた仕事をやみくもにこなすだけという状況から脱しないと,自分の能力を伸ばす意欲がわかず,単に疲弊していくばかりである。

周りにお手本を探す

 タイムマネジメントを実践するに当たっては,まずは仕事のできる上司や先輩のやり方を参考にしたい。タイムマネジメントは「仕事術」というべき基本的なビジネス・スキルであるためか,人に教えたり情報交換するケースがほとんど見られない。取材に応じてくれた「仕事のできる」ITエンジニアの大部分は,タイムマネジメントのテクニックを自ら編み出してきたという。それゆえ改めて上司や先輩に尋ねれば,きっと優れたテクニックが見つかるはずである。

 さらに,タイムマネジメントに関する本を参考にするのもお勧めである。ただし,自分でも実践できそうなテクニックが書かれているかをよく確認して欲しい。

 テクニックを学ぶのは簡単でも,それを実践し続けて自分のものにするには覚悟と時間が必要だ。最初は余計な仕事が増えた感じがして,面倒に思うかもしれない。しかし継続していくとPDCAサイクルが回って,着実に仕事のやり方が洗練されてくる。

 タイムマネジメントのテクニックを企業向けに教えているコンサルタントによると,半年もすれば効果を実感できるという。「時間欠乏症」という長年患ってきた“持病”の治療期間としては短いと思うのだが,いかがだろうか。

(中山 秀夫=日経ITプロフェッショナル)