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 GIS(地理情報システム)をご存じだろうか。デジタル地図に人口データや道路交通量,建物の位置などを組み込んだシステムのことだ。一般には,企業が店舗の出店戦略を立案したり,販売促進の指針を決定するときに使う。

 このGIS,以前に比べると,だいぶ利用企業の裾野が広がってきたようだ。筆者は,日経情報ストラテジーが昨年1月に発行した別冊「GISマーケティングのすべて」を担当したのだが,そのなかで取り上げた14事例のうち,10社が地方の中小企業の活用例である。レンタルビデオ・チェーン「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブや,自動車の修理チェーン大手のカーコンビニ倶楽部といった大手のほかに,ビルメンテナンス会社や商店街,ドラッグストアチェーンなど中堅・中小企業の顔ぶれも多彩だ。

 なかでも,大阪にある個人経営のたこ焼き屋「たこりん」と「にいたこ」の事例は興味深かった。パソコンもうまく使えないという店主が,アウトソーシング・サービスをうまく使ってGISを活用したのだ。

 具体的には,たこ焼きができる間に来店客に郵便番号を書いてもらい,アウトソーシングを委託したベンダーに渡す。ベンダーはGISを使って,地域ごとの集客状況を分析。この結果を基に,集客できていない地域にチラシをばらまいたのである。人口データなどを基に出店場所を決めるだけでなく,どこに宣伝のチラシをまくかをGISを使って決めて売り上げ増にむすびつけた。

中小企業でも活用が進む

 昨年春ごろに別冊の企画が持ち上がった際,活用事例を探すのは難航するだろうというのがスタッフ一同の見方だった。だが,終わってみれば14社の事例が集まった。特に中小事例を数多く掲載できたことは,既存のGIS関連本との差異化につながったと思う。「事例は意外に見つかるものだな」というのが,担当記者だった私の素直な感想である。

 読者の方には,「GISって意外なところで使われているんだな」と思ってもらえれば,いいかもしれない。あなたの会社でも,導入を検討するいいきっかけになるだろう。ちなみに,「たこりん」は社員4人,「にいたこ」は社員3人のお店である。月商は70万~80万円。こういう小さな店が,実はGISをうまく活用している。

 記者は別に「GISはすばらしい」とか「GISは万能だ」などと言いたいわけではない。ただ,マーケティングの精度を向上させようと考えている企業ならば,GISの利用を一度は検討してみる価値が十分あると思っている。

 取り上げた14社はいずれも,コストに見合う導入効果を上げている。出店までの期間短縮や,出店後の売り上げ増を期待できる。あなたの会社のライバルも,ひそかにGISを活用しているかもしれない。GISは企業の戦略や意思決定に大きくかかわってくるシステムなので,通常は利用実態が見えてこないことが多い。

 余談だが,今回の別冊を企画して,最初に取材の電話をかけたコンビニエンス・ストアやスーパーなどには,早々に取材を断られるケースもあった。やはり,表には出したくないという事情があるのだろう。

自社開発かアウトソーシングか

 GISは戦略的なシステムだけに,資金に余裕があるなら,自社開発して内部でこっそり利用したいところだ。そういう事情もあって,これまでGISと言うと,大企業だけが利用する高価なシステムという認識が強かった。実際,企業によっては,億単位のコストをGISの開発に費やしている。

 しかも地図は「生もの」だから,毎年人口や道路交通量,建物などのデータを更新していかなければならない。メンテナンスしないとGISは途端に使い物にならなくなる。

 別冊で取り上げた日本マクドナルドは1996年から独自開発のGISを利用しているが,その維持費用は毎年10億円に達しているという。現在こそ,苦戦を強いられているマクドナルドだが,96年から2001年までに店舗を約2000カ所から3800カ所まで一気に増やせた最大の要因はGISだったと言える。

 とはいっても,どの企業もマクドナルドのようにGISに投資できるわけではない。中小企業なら,なおさらだ。少し前までなら,GISをあきらめざる得ない企業も多かったことだろう。だが,今はGISの一部の機能を利用できるアウトソーシング・サービスも増えてきている。必ずしもGISを保有する必要はない。たこりんのように,割り切ってアウトソーシングを利用するのも一計だ。こうした選択肢の広がりが,GISの普及に一役買っているのは事実だろう。

(川又 英紀=日経情報ストラテジー)