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 「またコンサルタントの話か。しつこい」,「コンサルタントに恨みでもあるのか。いい加減にして,もっと別なことを書いてはどうか」と思われる読者が多いかもしれない(関連記事1関連記事2)。しかし,筆者は「sticky」なので,またコンサルタントのことを書く。

 きっかけは,1月30日にIT Proで公開した「絵だけでシステムは作れない」という記事である。なんと数日間で48人の読者からご意見をいただいた。厳しい批判が多かったので反省し,記事に書いた話について1月31日に再取材をした。その結果,驚くべきことが多々分かったので,それを読者にお伝えしたい。

 記事に関して大量の書き込みがあったことは,IT Proの井上編集長からのメールによって知った。あの記事は日経コンピュータに書いたもので,それをIT Proに転載したのであった。やや以前に書いたこともあって,公開日に読者からの書き込みを特にチェックしていなかった。通常,「記者の眼」を書いたときは,こまめに書き込みを確認しては,おののいている。

 公開初日から書き込まれた大量のコメントを読んで,驚いた。筆者の文章がまずかったため,読者に理解しにくい記事になっていたことに気付かされた。以下,代表的な批判を引用し,それに回答していく。読者の書き込みは一部手直した。


【書き込み1】
 皆さん勘違いしてますね。これは谷島さんお得意のジョークですよ。コンサルタントに関するジョークです。大金と時間を掛けた業務分析の結果がプレゼンテーション・ソフトの印刷出力だけなんてあり得ないでしょう。常識で考えて下さい。第一,受け取った経営トップが承知するはずがありません。「もっとデジタルな形にして持ってきてほしい」と言われてプレゼンテーション・ソフトのファイル出力を電子メールで送って来た,というところまで読んで,私はこれはジョークだとすぐに気が付きました。

 誤解を与えて申し訳ない。あれはジョークではない。そもそも筆者は冗談が得意ではない。もっとも,普通に話しているのに,相手が勝手に笑うことはしばしばある。脱線すると,古巣の日経コンピュータ編集部に電話をかけたり,顔を出したりしただけで,編集部の女性アシスタントは必ず笑う。

 先輩へ敬意を払わない日経コンピュータの若手記者は,「谷島さんは変わり者だから,それ自体が笑われるキャラクタなんですよ」という。しかし筆者が変わっているとしても,携帯電話を持っていない,自動車免許がない,ゴルフを含め運動を全くしない,テレビを見ない,昼食をあまりとらない,肉は食べない,といった程度である。なぜ笑われるのか謎である。

 話を戻す。ジョークと思われた方がいたことに加え,次の意見は打撃であった。


【書き込み2】
 担当者の「呆然」から始まっているんでちっとも分からないんですが,(中略)とにかく本当に「自社内でシステムを構築する」ことを前提に,要件定義書作成を依頼したのかどうかという重大なポイントがこの記事からは欠落している。システム担当者の言い分が述べられているだけで,背景の状況が全く見えてこない。こういう記事はジャーナリズムとして成立していないと思います。ふと小耳にはさんだ笑い話をそのまま記事にしてしまっただけなら,お手軽に過ぎるでしょう。

 筆者はジャーナリストなので,こう言われると痛い。システムズ・エンジニアの方が,「こういう仕事のやり方ではエンジニアリングになっていない」と言われたようなものである。

 特に,「ふと小耳にはさんだ笑い話をそのまま記事にしてしまっただけなら,お手軽に過ぎる」という指摘がつらい。告白すると,ほぼこの通りであった。ただし小耳にはさんだというより,取材の中で聞いた話である。原稿自体は真面目に書いたが,読み返すと背景の情報が確かに欠落していた。ほかの方からも同様の指摘があった。


【書き込み3】
 この手の文章に多い書き方ではあるが,「コンサルティング会社」と漠然とした書きかたでは,あまりに広く捉えすぎである。これでは「コンサルティング」を使っている,もしくは使おうとしているユーザー側にとって何の価値もなく,偏重な見方である。この記事の筆者は所謂「コンサルティング会社」と同様のことをこの媒体を使って示しているように読んで取れる。

 ジャーナリストの基本は取材である。そこであの話を聞いた人にもう一回,会いにいった。さらに告白すると,雑談を記事に書くにあたって,この人に許可はとらなかったし,書いたあとも連絡していなかった。

 ご本人はIT Proではなく,日経コンピュータの記事のほうを読んでおられた。以下は,その方と筆者のやり取りである。ただし,企業名や役職を書くことはできないので,A氏とする。読者の方は背景がまだすっきり理解できないかもしれないが,そこはご了承いただきたい。

谷島:大金を払ってコンサルティングを頼んだら,半年後にプレゼンテーション・ソフトで描いた絵が届けられた,という話を勝手に書いたところ,「そんなことがあるはずがない」と多くの読者から言われました。

A氏 :そう言われても事実ですからねえ。証拠を見せましょうか。(資料を持ってくる)これがそれです。

谷島:ううむ。確かに絵ですねえ。


【書き込み4】
 極端な話になっているような気がします。コンサルタントに求めるサービス・レベルの定義ができていたのでしょうか。また,要件定義書の内容も,事前にコンサルタントと詰めておくべきと考えます。

【書き込み5】
 そのコンサルティング会社には以前も依頼をしており,今回は前回と違う書式・内容の報告だったのでしょうか。もし今回が初めてなら契約時に,「どういう書式で」,「どのような内容で」と決めておくべきでしょう。事前の取り決めをしていなければ,目くじら立てて文句を言うべきではないと思います。

【書き込み6】
 最初にコンサルタント会社からどういうものが納入されるのかという取り決めをしたと思うが,それ自体が「絵」で書かれた抽象的なモノで,どうとも取れる説明だったのではないか。

【書き込み7】
 どのような形式で提出してほしいのかを要求しなかった方が悪いのではないかと思います。もし具体的に指示していたのであれば,コンサルティング会社の方が悪いと思います。


谷島:最初から成果物をきちんと決めておかなかった客が悪い,という意見がたくさん寄せられています。

A氏 :何を依頼したか言いましょう。業務改革をして,同時にERPパッケージを入れようというプロジェクトです。プロジェクトの全体計画作成,課題の抽出,その課題を解決するビジネス・プロセス(業務)の定義を,大手コンサルティング会社に依頼しました。ほかの企業にも聞いてみましたが,こうした案件で大手コンサルティング会社がプレゼンテーション・ソフトで描いた成果物を届けるのは普通のことみたいですよ。
 成果物といっても,コンサルティング会社はあくまでもサービスを提供してくれるだけで,成果物を保証してくれないのですよ。請負契約ではないですから。成果物を縛る形の契約を,彼らは絶対しないのです。

谷島:そういえばそうですね。ただ,業務の定義結果をこういう形にして納品しろ,と注文を付けられたのではないですか。

A氏 :読者が言いたいことは分かります。ただ,今回依頼した仕事については,成果物を指定しにくいんですよ。弊社の業務全体を見渡して,課題を解決するための業務を定義してくれるよう頼んだわけです。これをどう表現するのがいいのか,なかなか難しいでしょう。もちろん,業務フローをこの書式で描け,と言うことはできましたが,そうすると個別の業務を詳細に整理しただけの成果物になってしまうような気もします。
 また,我々にとっては初めて使うERPパッケージを前提としていたこともあって,こちらから成果物のありようを指定することはできなかった。ERPパッケージについてはコンサルティング会社のほうが経験があるし,詳しいだろうと思ったのです。


【書き込み8】
 言いたいことはものすごく沢山ありますが,「当然,ここで言っている“デジタル”とは,システム設計ができるための詳細な業務要件をすべて列挙せよ,という意味だ」という下りについてだけ書きます。これって「常識」だとも「情識」だともまったく思いません。そんな用法が通じると思っている担当者に問題があり,あたかもそれが通じるかのように広めるメディアに問題があると思います。

【書き込み9】
 「デジタルな形」とは詳細化するという意味が一般的なのですか。

【書き込み10】
 「デジタル」という言葉もシステム担当者と一般の人では解釈が違うようで,記事を読み進めなければ私も違う理解をしてました。


谷島:記事の表題の一部として,「業務分析の結果は“デジタル”で表現する」と書いたところ,これについても批判がたくさん来ました。

A氏 :確かにあのとき,デジタルといったんですが。ううむ,これも読者の人が正しいかな。なんといったらいいのか。とにかくコンサルタントは半年間もかけて,詳細にヒアリングしていったわけですよ。その結果を絵にまとめてくるのはともかく,聞いた内容をサマライズしないで,詳細な項目をきちんと網羅して伝えてほしいという意味でした。といってただの議事録では困る。我々から聞いた内容を,なんらかの構造的で一意な形に整理して,持ってきてほしいという意味でした。このニュアンスをデジタルと申し上げたのです。

谷島:一意ってどういう意味ですか。

A氏 :その記述から複数のことをイメージしない記述っていったらいいでしょうか。つまり,抽象的な絵では,全体を俯瞰しやすくても,複数の意味にとれる危険があるでしょう。

谷島:構造的で一意というと,データ・モデルなんかですか。

A氏 :それは一つでしょう。フローチャートでも,表でもいいですよ。ケースの種類と属性を網羅的かつ一意に整理するには表ですね。

谷島:確かに,「項目の一覧とその規定では表計算ソフトに分があるように思う」と書いてこられた読者がいました。

A氏 :細かいことをいうと,成果物の絵に書かれている言葉も思いきりアバウトだったんです。「××など」,「迅速な処理」,「情報」とか。「などってなんだ」,「迅速ってなんだ」ということです。一意じゃないでしょう。

谷島:それは記者でも禁止ですね。日経コンピュータの副編集長をしていたとき,そうした言葉遣いの原稿を読むと,「もっと具体的に書け」と記者をしかっていました。


【書き込み11】
 プレゼンテーション・ソフトが蔓延したことが原因ではないと思います。きちんとした資料を作るコンサルタントを雇うのが重要なのですよね。あまりいない気もしますが。

【書き込み12】
 本当にプレゼンテーション・ソフトのせいなんですか。問題の所在をすり替えている気がします。

【書き込み13】
 この記事では,プレゼンテーション・ソフトの利用と,仕事の手順の話を結び付けているところに矛盾があるように思えます。


谷島:それからプレゼンテーション・ソフトの蔓延とからめて書いたら,これまた読者に怒られました。

A氏 :それは読者の言う通りで,プレゼンテーション・ソフトのせいにしたのは,無理筋じゃないの。谷島さんのプレゼンテーション・ソフト嫌いは知っているけれど,ああ書いたら,ソフトを作っている会社に気の毒でしょう。そうか,あのソフト・メーカーのことも嫌いなんだっけ。

谷島:確かにあのソフト・メーカーのソフトについて,「基幹業務処理で使える品質ではない」とか,批判記事を昔,書きましたよ。ただ会社が嫌いなわけではない。今回の件はともかく,あのプレゼンテーション・ソフトの蔓延は問題と今でも思います。あの限られた面積に情報を詰め込むから,どうしてもまとめようとして抽象的な表現になるんじゃないかなあ。

問題を体系立てて考える

 A氏と話し合ってから,事務所に戻って読者のコメントを読み直し,いろいろと考えた。特に次のコメントは強く記憶に残った。


【書き込み14】
 この手のコラムには必ずといっていいほど,「基本ができていない」と読者からコメントがつきます。でも基本って何かが今ひとつわかりません。そのあたりの特集をお願いしたい。私はこの世界に入って13年になりますが,人から基本というものを明示的に教わった記憶がありません。ユーザーに怒られ,上司にしかられ,ベンダーになめられ,会社のお金を無駄に使い,トラブルを出し,プロジェクト・メンバーと揉め,徹夜をし,泣きそうになり,会社を辞めようかと悩み,それでも何とかシステムを動かしてきた結果,一つひとつ自分の中でノウハウをためています。それでもいまだにトラブルには事欠きません。基本ができていないのかなあ。

 この方は十分,基本を把握されていると思う。ぜひ今後も,プロジェクトに取り組んでいただきたい。

 結局,今回の原稿には,コンサルティング会社を使うERPパッケージ導入プロジェクトの実態,コンサルティング会社との契約,コンサルタントに依頼すべき仕事内容,プレゼンテーション・ソフトの普及,といったことをすべて詰め込んでしまった。このため分かりにくくなったと考える。

 筆者がstickyに書いている「コンサルティング会社問題」とは,「業務改革とシステム構築をするときに,業務要件の分析と整理をだれがどのようにいくらくらいかけてやるべきか」という問題と言える。そこで,こうした「基本」について,「網羅的体系的」に考え,何回かにわたって記事を書いていくことにした。

 そういえば今回の記事においては,もっとも重要な情報が欠落している。絵をもらったA氏はそれからどうしたかである。今回,後日談もしっかり聞いてきた。A氏のプロジェクトは,実に驚くべき展開を見せている。これだけで数回分記事が書けるので,おって報告したい。

 この際なので,IT ProBizTech日経ビジネスEXPRESSといったWebサイト,そして日経コンピュータを交え,多方面の読者にこのテーマを発信していくことにする。といっても筆者は,「基本を知っている人」から取材するしかない。IT Pro読者の方,おって意見を募りますので,ぜひともお寄せ下さい。

(谷島 宣之=ビズテック局編集委員)