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 Linuxディストリビュータのレッドハットターボリナックスが,相次いでクライアントPCでの利用を狙ったOS製品を2003年10月下旬に発売した。

 レッドハットが10月31日に発売したのは「Red Hat Professional Workstation」。定価は1万4800円である。一方ターボリナックスは,レッドハットに先立つこと1週間前の10月24日に「Turbolinux 10 Desktop」を発売済み。こちらの定価は1万5800円だ(定価が3980円の廉価版「Turbolinux 10 Desktop Basic」もある)。

一見競合するように思えるが,ターゲットは全く異なる

 製品名に含まれる“Workstation”や“Desktop”という用語から分かるように,両製品ともにクライアント用途のパソコンで使われること,言い換えれば,Webブラウジングやメールのやり取り,文書作成といった家庭や業務でよく行う作業で使われることを想定して開発されたディストリビューションだ。最近では,こうしたディストリビューション,あるいは使い方そのものを「デスクトップLinux」と称することが増えてきた。

 両製品ともにデスクトップLinux市場を狙ったものであることや,定価が同程度であることから,一見すると競合製品のように思える。しかし,含まれるアプリケーションの内容構成やデスクトップ画面などの“作り込み具合”を見てみると,レッドハットとターボリナックスの両社が想定したユーザー層が全く異なることに気付かされ,さらには両社のデスクトップLinuxへの取り組み方の違いが鮮明になる。

レッドハットはパワーユーザー向けに投入

 レッドハットのRed Hat Professional Workstationは,Webブラウザの「Mozilla」や統合オフィス・ソフトの「OpenOffice.org」,メール・クライアントやカレンダ,スケジュール管理の各機能を備えた「Ximian Evolution」など,デスクトップLinux用に必要と思われる一通りのソフト群を搭載する。ここまでは,デスクトップLinuxを前提とした製品なだけに,当然のアプリケーション構成と言えるだろう。

 ただし,さらに構成を見ていくと疑問が生じる。それはRed Hat Professional Workstationには,商用の日本語フォントやかな漢字変換ソフトなどが一切含まれていないことだ。従来,1万円を超える価格帯のディストリビューションの多くでは,商用の日本語フォントやかな漢字変換ソフトが含まれているのが当たり前だった。事実,レッドハットも従来製品「Red Hat Linux 9 Professional」では,商用のかな漢字変換ソフト(オムロンソフトウェアの「Wnn7 Personal」)や商用の日本語フォント(リコーの「日本語TrueTypeフォント」)を同こんしていた。

 また,デスクトップLinux市場を狙ってディストリビューションを投入する以上,より見栄えが良い商用フォントや変換精度が高い商用かな漢字変換ソフトを搭載するのが当然のように思える。従来製品に含まれていただけに,新製品であえて外す理由は思い当たらない。

 この点について,レッドハット社長の平野 正信氏に聞いてみると「レッドハットの製品には,なるべくオープンソースのソフトウエアだけを収録することにしたため,今回からは商用ソフトを入れていない」という。こうした方針もあり,「Red Hat Professional Workstationを,自分でソフトを導入できるようなパワーユーザー向けの製品と位置付けている。商用フォントが必要なユーザーは別途購入して導入してほしい」と語る。つまり,自分で商用ソフトを導入するなどして好みのデスクトップ環境を仕立てられるパワーユーザー向けの製品が,Red Hat Professional Workstationということになる。

“普通のパソコン・ユーザー”をターゲットに据えたターボリナックス

 一方,ターボリナックスのTurbolinux 10 Desktopは,日本語フォント(リコーの「日本語TrueTypeフォント」)やかな漢字変換ソフト(ジャストシステムの「ATOK X」),サン・マイクロシステムズの「StarSuite 7」などの商用ソフトを搭載する。さらに,キヤノンやエプソン,沖データのそれぞれが自社のプリンタ向けに開発・提供するデバイス・ドライバも搭載する。このほか,WebブラウザのMozillaなど,一般的なLinuxディストリビューションが搭載するオープンソース・ソフトウエアも備えている。
 ターボリナックスは,このように商用のアプリケーションなどを数多く搭載することで,デスクトップ用途での機能や見栄えの面でなるべくWindowsに見劣りしないようにするだけでなく,デスクトップ画面のレイアウトや操作方法においても,Windowsユーザーが違和感なく使えるように配慮した。

 具体的には,Turbolinux 10 Desktopのデスクトップ画面には,「マイコンピュータ」や「マイドキュメント」,「ごみ箱」といったWindowsでお馴染みの名前を与えられたアイコン群が表示される。もちろん,ファイル・マネージャでファイルを指定してごみ箱にドラッグするといった,Windows上と同等の操作が可能だ。さらに,キーボードのショート・カット・キーの組み合わせもWindowsのそれに合わせた。Turbolinux 10 Desktopのデスクトップ画面では,コピーは[Ctrl]+[C],張り付けは[Ctrl]+[V]で行える。Windowsユーザーにとっては当然の操作だが,Linuxのデスクトップ画面でこの操作が標準で行えるのは極めて稀だ。

 ターボリナックスが,ここまでWindowsに似た見た目と操作性を重視したのは,普通のパソコン・ユーザーをターゲットに据えたからだ。「これまでWindowsだけしか操作したことがないユーザーにもなるべく違和感なく使ってもらえるように,Turbolinux 10 Desktopを仕上げた」(ターボリナックス 本社事業企画部 プロダクトマネージャの久保 和広氏)という。

現実解のRed Hatと意欲作のTurbolilnux

 両社ともにデスクトップLinuxという今後の成長が期待できる市場を狙いながらも,一定数が見込め,なおかつ,あまりサポートの手間がかからないパワー・ユーザーに焦点を絞ったレッドハット,片やサポートは大変かもしれないが,より多くの一般ユーザーをターゲットに据えたターボリナックス。少々強引かもしれないが,デスクトップLinux市場という枠組みの中でも,手堅い“現実解”がRed Hat Professional Workstation,市場喚起を狙った“意欲作”がTurbolinux 10 Desktopというように位置付けられるのではないか。

 ここでは,両ディストリビューションに付属するサポートやパッチ(不具合修正用やアップデート用のプログラム)の提供期間といったサービスについては触れられなかった。また,デスクトップLinux分野の製品については,上記以外にも,エッジが販売する「LindowsOS4.0日本語版」などが登場している。サポート・サービス情報やその他のディストリビューションを含めた内容構成の比較の際は,日経Linuxのディストリビューション情報のページを参考にしていただきたい。

(田島 篤=日経Linux副編集長)