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 半年ぶりに,飲み屋でのちょっとしたウンチク話のネタを提供させていただこう(前回のウンチク話)。今回は日経NETWORKの2004年7月号の特集記事『プロトコルはなぜ必要か――通信が成り立つ基本がわかる』からの抜粋で,“プロトコル”という言葉が通信の世界で使われ出した経緯を紹介しよう。

 プロトコル(protocol)という言葉の語源は古く,古代ギリシャにまでさかのぼる。それは,古代ギリシャ語で巻物の最初の紙という意味の「protokollon」が語源だ。その後,草稿や議事録という意味になり,議定書や外交儀礼という意味に発展した。

 しかし,通信用語としての“プロトコル”が生まれたのは,そう古い話ではない。今からおよそ40年前,コンピュータ・ネットワークの幕開けとともに使われるようになった。

最初はARPANETから

 “プロトコル”という用語が通信の世界で最初に使われたのは,今からおよそ40年前。舞台は,インターネットの起源として知られるARPANETである。ARPANETは大型コンピュータを共有するためなどに作られたネットワーク。1968年に稼働した。

 このARPANETが,それより前からあった電話網と根本的に違ったのは,コンピュータ同士がデジタル・データをやりとりした点だ。電話網では,人間同士が音声をやりとりする。そこでやりとりされる情報に多少の誤りやあいまいさがあっても,人間の判断によって情報を補える。

 しかし,ARPANETではあいまいさの余地を許さないコンピュータがデータをやりとりしなければならない。このため,コンピュータ間で厳密な「取り決め」が必要になり,実際に取り決めが決められていった。そして,この決めごとのことを,ARPANETのエンジニアが「プロトコル」と呼んだのである。

X.25で一般に広がる

 しかし,プロトコルという言葉は,まだ一般に知られることはなかった。ARPANETは,ごく限られた研究者しか利用できなかったからだ。

 プロトコルという通信用語が広がるきっかけとなったのは,X.25という通信方式が誕生する過程にある。X.25というのは,パケット交換技術の標準規格。実は,パケット交換方式を最初に実現したのはARPANETだったが,一般ユーザーも利用できる公衆ネットワークを作ろうという動きが始まり,X.25が策定された。

 このX.25では,コンピュータや交換機同士のさまざまなやりとりを厳密に決めていった。そして,その決まりごとをプロトコルと呼んだ。この結果,世界中のパケット交換のエンジニアの間でプロトコルという用語が共通語になった。

コンピュータ間の取り決めを指す

 パケット交換以前の電話網にも,当然細かな取り決めがあった。しかし,それらは「信号方式」や「手順」と呼ばれていた。そこでは,通信する者同士が取り決めをしておく,という認識は希薄だった。とにかく伝送路が先にありきで,それを使って信号を正しく伝えるのが最大の目的だった。

 一方のコンピュータ・ネットワークでは,コンピュータ自身がデータをやりとりし,処理する。このため,信号をやりとりする伝送路に関する決まりに加えて,コンピュータ同士がやりとりするデータの形式や処理手順の決まりを厳密にしておく必要があった。そして,この取り決めをプロトコルと呼んだのである。

 ただし,当時は伝送路に関する取り決めはプロトコルと呼ばなかった。あくまでもコンピュータ上で動くソフトウエアに関する取り決めがプロトコルだった。その後,プロトコルの階層化や体系化が進むにつれて,伝送路などのハードウエアに近い部分も含めて,通信にかかわる取り決めをまるごとプロトコルと呼ぶようになった。

 プロトコルという通信用語が誕生した背景は,こんな感じだ。日経NETWORKの特集記事ではコンピュータ通信を成り立たせるために,プロトコルが何をどのように決めているかという技術的な側面も解説している。ぜひ,そちらものぞいてみてください。

(三輪 芳久=日経NETWORK)