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 「最近のITベンダーの見積もりにはいい加減なものが多い。まず,システム開発の見積もり金額のばらつきが,どんどん大きくなっている。RFP(提案依頼書)がきちんとしているにもかかわらず,極端な場合は差が10倍に達することもある。また,中には“一式いくら”というあきれたものさえあり,細目を聞いても明確な根拠を示さない。これではとても信頼して発注できない」――

 これは,記者が日経ITプロフェッショナル9月号で見積もりに関する特集を執筆することになり,その取材で訪れた調達担当コンサルタントの言葉である。ユーザーとともにITベンダーの提案書や見積書を診断している同氏は,「リスク分析をほとんどせずにリスク分をコストに載せていたり,プロジェクト・メンバーに意味もなく単価の高い部長クラスを3人も含ませていたりするなど,ユーザーが受け入れ難い見積書があまりにも目立つ」と言う。

見積もりがどんどん難しくなっている

 ベンダーが提出する見積もり金額のばらつきが大きくなっているのは,やむを得ない側面もある。その大きな理由は3つ挙げられる。

 1つ目の理由は,要件定義が困難になっていることだ。「システムの目的が業務の効率化から売上の増大に移るにつれて,ユーザー自身も要件を把握できなくなっているケースが多い」(あるプロジェクトマネジャー)。だからこそ,ITベンダーが要件を正確に定義する必要があるわけだが,その方法やスキルによって要件に大きなバラツキが出る。当然,見積書に示された開発規模や工数,体制などにも影響が生じる。

 2つ目の理由は,システムの実現方法が非常に多岐にわたるようになったことだ。オープン化の流れによって,たとえ同じ目的を果たすシステムであっても,選択する技術や,製品の組み合わせによって工数やコストは大きく変わる。例えば,同じシステムの開発でも,手組みで1から作る場合やパッケージ・ソフトを使う場合,あるいはフレームワークを活用する場合など,実現方法によって見積もり内容に大きな違いが出てくる。

 先のプロジェクト・マネジャーも,「メインフレーム時代は,仕様に基づき,ソースコードのステップ数を積み上げればある程度精度の高い見積もりができた。ところが今は,オブジェクト指向言語になってステップ数換算ができず,利用する製品や技術,プロマネやSEのスキルによっても工数に大きな差が出てしまう」と話している。

 そして見積もりにかけられる時間が短くなっていること。これが3つ目の理由だ。最近は一般に,ユーザーがRFPを提示してから見積書を提出するまでの期間がおよそ2週間,短い場合は1週間,と言われている。だが,システム開発に利用する技術・製品は高度化・専門化しており,外部システムとの統合も増えている。それらを考慮しながら,短期間で精度の高い見積もりを作成するのは“至難の業”と言ってもよい。そうした状況では,組織に蓄えられている見積もり技法やノウハウの差が,そのまま金額の差になって現れるというわけだ。

いい加減な見積もりはやがて自分の首を絞める

 精度の低い見積もりの最大の問題は,顧客に説得力を持って提示できないことにある。見積もりの根拠を示せなければユーザーの不信感を招き,提案コンペで勝てないだろう。さらに言えば,たとえ案件を受託したとしても,いい加減な見積もりでは,プロジェクトを成功に導き,利益を確保するのもおぼつかない。

 もちろんプロジェクトが失敗する原因は,見積もりの問題だけではない。だが,最初の見積もりがいい加減では,“負け戦“に飛び込むようなものだ。

 見積もりの根拠とは,その見積もりが「いったい何に基づいて算出されたのか」を指す。具体的には,最終的な工数や金額を算出するにあたって,そのベースが過去の実績なのか,あるいは機能数なのか,それとも作業時間数の積み上げなのか・・・などのことである。ユーザーはそれらの根拠に基いて,見積もり内容の妥当性を判断するわけだ。

皆さんはどのようにお考えですか?

 ここでIT Pro読者の皆さんにお聞きしたい。皆さんは,システム開発の工数や金額をどのように見積もっているのだろうか。見積もりに関するご意見をお聞きしたく,文末に簡単なアンケート・フォームを用意した。

 アンケートの目的は,(1)現在見積もりを巡ってどんな問題があるのか,(2)標準的な見積もり技法の有無や種類は,(3)過去実績のデータベース化に取り組んでいるか,(4)見積もりに関するスキルの習得状況は――などを明らかにすることにある。結果については,日経ITプロフェッショナル9月号,および,このIT ProのWebサイトで報告する予定だ。

(池上 俊也=日経ITプロフェッショナル)