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 最近,注目されているIT経営のキーワードの1つに,「BPO/BTO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング/ビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング)」が挙げられる。メインフレームやサーバーなどハードの保守・運用を外部委託するアウトソーシングをさらに拡張した概念で,システムに付随する業務まで含めてコンピュータ会社が請け負う,というものだ。

 分かりやすい例では,コール・センターのシステムを使った受注処理業務,人事・給与計算の業務代行,そのほかデータ入力業務なども,広い意味でBPO/BTOと呼べるだろう。最近のケースでは,三井生命保険が保険契約に関する事務作業を日本IBMに全面委託する,といったものがある(関連記事)。外部委託する業務は保険契約の変更や書類の送付,契約顧客からの問い合わせ応対など多岐にわたっており,契約期間は2004年4月から10年間。契約金額は10年間で360億円だが,三井生命は10年間で50億円のコストを削減できるという。

 コンピュータ会社にとっては,単なるシステムの保守・運用だけでなく,業務も含めて請け負えるから,いわば「新しい飯の種」が増えることにつながる。そこで多くのコンピュータ会社がBPO/BTOに注目しているのだ(ちなみに日本IBMによれば,BTOの定義は「企業の業務をITで変革するサービス」ということだが,筆者にはBPOとBTOの違いはあまり明確ではないと感じる。プロに業務委託するなら変革して当然だからだが,今回の本題はそこではない)。

 しかし,ユーザー企業はどうか。筆者は現在の日経ソリューションビジネス編集部のほか,日経情報ストラテジー編集部や休刊なった中堅・中小企業向けIT経営誌の日経アドバンテージ編集部にも在籍した経験があり,コンピュータ会社だけでなく,多くのユーザー企業にも取材してきた。BPO/BTOのユーザー企業にも取材したが,コンピュータ会社の意気込みとは異なり,ユーザー企業の微妙な温度差を感じたのである。

「今は契約しているが将来は分からない」

 実際,ユーザー企業に取材を申し込むとほとんどが取材拒否であり,通常のユーザー企業の取材のようにスムーズには行かない場合が多かった(BPO/BTOのユーザー事例を雑誌で見ることが少ない理由もここにあると思われる)。取材拒否の理由が「守秘義務」なら分かるが,既にBPO/BTOを導入している多くのユーザー企業が,「まだBPO/BTOを評価できる段階ではない」「将来見直すかもしれない」「これから詳細を詰めていく」と言った理由なのである。要するに,「今は確かにBPO/BTOを利用しているが,この先は分からない」というわけだ。

 あいまいな理由に聞こえるが,実はここにユーザー企業の本音があると思う。BPO/BTOでは業務も含めて委託するが,ユーザー企業自体がどんどん変革している時代では,長年にわたって続くような業務はなくなってきているからである。

 今年は推進している事業も,来年には撤退しているかもしれない。業務の中身もどんどん見直しされるし,当然,アプリケーションソフトも変わる。ユーザー企業にとって,人事・給与や物流など経営に必須となる業務,システムの保守・運用など業務の中身に関係ない部分以外では,長年にわたって業務を委託する契約を結ぶのはあまり現実的ではない。冒頭の三井生命の例は,将来の戦略性まで重視して委託しており,極めてまれなケースといえるだろう。

SMBビジネスの新たな手段に

 ではコンピュータ会社にとってBPO/BTOの市場開拓は難しいのか,といえば決してそうではない。1つは,人事・給与や物流,受注など経営にとって普遍であり必須となる業務に絞り込むことだ。ここは必ず業務があるから,ユーザー企業にとってはコスト削減したい部分だ。もう1つは,長年にわたって契約する形態ではなく,新規事業が発生したときにBPO/BTOで支援するなど,スポット的な契約形態にも積極的に対応することだろう。

 実際,ある中堅の医薬関係のユーザー企業は,新製品をEC(電子商取引)サイトで販売するときにBPOを利用した。ネットによって新製品の特性に応じた新しい販売チャネルを獲得するのが目的で,サイトの構築や保守・運用に加え,メルマガを使ったPR活動,セミナーの開催,受注処理,商品の配送手配まで含めて委託したのである。既存事業をBPO/BTOに置き換えるとなると社内から反発が起きるかもしれないが,新規事業を委託するならスムーズに進む。ユーザー企業にとって,BPO/BTOを活用しやすいといえる。

 こう考えると,大手と違って社内に経営資源が乏しい中堅・中小企業の方が,BPO/BTOの活用は必須になる。大手でも事業部門など小さい単位で見たほうが,まだまだ市場開拓の余地はありそうだ。BPO/BTOを推進するには,コンピュータ会社の都合ではなく,ユーザー企業の視点から改めてビジネス・モデルを見直す必要があるのではないだろうか。

(大山 繁樹=日経ソリューションビジネス)