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 WindowsやLinuxに比べて,安定している――これがUNIXの一般的なイメージだ。

 ゲーム・サイト「ハンゲーム」を運営するNHN Japanでは,複数の種類のOSを用途に応じて使い分けている。同社の佐野裕氏(ネットワーク&システム室 室長)は「UNIXは負荷をかけても,なかなか落ちない。リソース管理がよほどしっかりしているようだ」と評価する。野村総合研究所が実施した検証データ(「ITソリューションフロンティア」2004年5月号に掲載)を見ると,同時実行ジョブ数が増えていってもUNIXはスループットをなかなか落とさない様子が見て取れる。

 UNIXは,メインフレーム置き換えの受け皿としても,定着した感がある。「海外では90年代からUNIXでメインフレームを置き換える動きが続いていた。日本でもようやくその動きが本格化してきた」(サン・マイクロシステムズ プロダクト&ソリューション・マーケティング本部 主幹部長 野瀬昭良氏)。最近の事例では,ソニーマーケティングがアプリケーションの改変に限界を感じてIBMメインフレームを,建機レンタルのカナモトがメンテナンス期間の終了を機に富士通メインフレームをUNIXにリプレースした。

 しかし,UNIXを取り巻く環境はむしろ厳しい。「今後どうなるのだろう」と感じることが増えてきた。

じわり進むUNIX離れ

 UNIXを取り巻く環境の厳しさは,ユーザー企業の取材で感じる。大手工事施工会社 日本コムシスは,Solarisを社内の標準OSとしてきたが,今年それをLinuxに切り替える方針を打ち出した。「アプリケーションの数が増えてきた。そのたびにサーバーを買い増していてはコスト負担が大きくなりすぎる」(事業推進本部 社内情報部門 担当課長 藤本晴彦氏)ことを危惧したためだ。

 「日経システム構築」に過去に掲載したケーススタディをひっくり返してみても,クラスタリング構成を取りやすくサーバー単体での信頼性があまり重視されないWebサーバーでは,既にWindowsやLinuxが選択されるケースが圧倒的。多少のダウンタイムなら許容できるちょっとした業務用サーバーでも,似たような状況にある。

 最近では,ミッション・クリティカルな大規模システムのAP/DBサーバーでも,WindowsやLinuxがじわり浸透してきた。例えば,大規模ERP「SAP R/3」の稼働OSとして,Windowsを選択しているユーザーは多い。前述のカナモトの熊谷浩氏(執行役員 情報システム部長)は「基幹システムの次のプラットフォームはLinux」と言い切る。次のリプレース時期は5年後だ。

 NECの川村敏郎副社長は,Linuxについて「10年前のUNIXと同じ。今後,年率25%の急成長が見込める。技術者を増員し,サポート体制も充実させる」と元気のいいコメントを出している。

Windows/Linuxとの差がなくなる

 WindowsとLinuxは,何と言っても比較的安価なIAサーバー上で稼働させられることと,Windowsについては技術者の確保が比較的容易であることのコスト・メリットが大きい。

 逆に弱点は,根強い「信頼性への不安」。マイクロソフトはWindows NTの頃からの「メモリー・リークを起こしやすい」とのイメージを払拭しきれない。Linuxは「カーネル・パニックを起こした際のログが貧弱」など,商用UNIXと比べて基幹システムを安定運用するには力不足の面が残る。現時点では,信頼性に関してUNIXは一歩も二歩も先行している。

 もっとも,5年後も今と同じようにその差を維持できているかどうかは,難しいところかもしれない。サーバー・メーカーの新製品動向を見ると,ハードウエア・レベルでのOS間の差は既になくなっていることが分かる。例えば,NECのUNIXサーバー「NX7700i」とWindowsサーバー「Express5800/1000」は,シリーズこそ違え電源やチップセットなどハードウエアは基本的に同じものを使っている。

 富士通は2005年に基幹IAサーバーを出荷する。これはメインフレームで培った技術をWindows/Linuxサーバーに移植し,ミッション・クリティカルな用途に投入するサーバー製品。チップセットなどハードウエア周りの信頼性向上が中心になると思われるが,OSにも何らかのフィードバックがなされるだろう。Linuxでは既にその成果が徐々に出始めている。Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の開発にはメインフレーマの技術者が複数参加しており,最新版には富士通の技術者が開発したメモリー・ダンプの機能が盛り込まれている。

メインフレームと同じ道も

 これに対し,UNIX陣営の巻き返し策は見えにくい。例えば,Linuxに対抗した値付けはその一例かもしれない。あまり知られていないが,小規模なサーバーで使うなら,WindowsやLinuxと比べてUNIXは引けを取らないかむしろ安い。1CPUで使うなら,Solaris(x86版)は1万5000円(年間保守料4万3200円)で購入できる。RHELなら9万9800円(ESの場合,年間保守込み)かかる。

 もっとも,これが仮に成功したとしても,UNIXが小規模用途の低価格OSとして生き残るシナリオは考えにくいだろう。あり得るシナリオの一つは,メインフレームと同じ道を辿ること。ACOSの開発を継続するNECは「新しいACOSは,新規ユーザーの獲得というより,既存ユーザーの乗り換え先を用意することが目的」(プラットフォーム販売推進本部長山内久典氏)としている。巨大な既存資産を維持しながら既存ユーザーをつなぎ止める道だが,縮小均衡は多くいるUNIX技術者にとっても望ましい道ではない。

 5年後,Windows/Linuxを凌駕するUNIXの魅力は何なのだろうか。メーカーへの取材を含め「これだ!」という回答はまだ得られない。

(尾崎 憲和=日経システム構築)