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 企業が自社のWebサイトで「ブログ(blog:日記式の簡易Webサイト)」による販促を始める例が増えている。9月18日に,P&Gが洗剤「アリエール」の販促ブログ「アイラブ困ったさんコンテスト」を始めた。日産自動車も,9月30日の新型車「ティーダ(TIIDA)」発売と同時に「TIIDA BLOG」を開始。味の素も10月1日に,料理をテーマにした「マヤヤのお料理ABC」を始めるなど,ここ1~2カ月で販促目的のブログが相次いで立ち上がった。

 ブログに明確な定義はないが,上記3つのブログの共通点としては,(1)簡潔な文章や写真を日記形式で頻繁に追加している,(2)コメント投稿やトラックバック(読者が自分のブログで企業ブログの内容を引用した場合に,企業ブログから読者ブログへのリンクが自動的に生成される仕組み)という形で読者がブログに参加できる仕組みがある――などが挙げられる。

 筆者は率直に言ってブログに対して懐疑的で,「コンテンツ管理ツールとしては便利だろう」ぐらいの認識しかなかった。しかし,周囲にブログを書く人が増えてくるのに感化され,遅まきながら,電子メールやインスタント・メッセンジャーなどとは違ったコミュニケーション・ツールとしての魅力を感じるようになった。それが高じて,ブログのビジネス活用に関する記事を企画。『日経情報ストラテジー』の次号(11月24日発売)に掲載する予定で,企業ブログの費用対効果や運営のコツを明らかにするべく取材を進めているところである。

商品特性によってツールは変わる

 企業によるブログ活用といえば,ライブドア・堀江貴文社長の「livedoor 社長日記」のように,社長など企業内個人が情報発信ツールとして使う例が多かった。ところが最近の特徴は,特定の商品やサービスを軸にした情報発信にブログを使おうとしていることだ。

 特定の商品やサービスを軸にしたサイトのコミュニケーション・ツールとして,従来は電子掲示板(読者が自由に話題を書き込める仕組み)がよく使われてきた。読者が自由に話題を提示できる掲示板に対し,ブログでは一般に企業が提供した話題について読者がコメントを付けたりトラックバックするという形に制限されている。

 日産でTIIDA BLOGを担当するマーケティング本部販売促進部の工藤然氏は,「電子掲示板は自由に書き込める分,車に関係のない話題が展開されてコミュニケーションが拡散する懸念がある」と話す。また,ブログでは電子掲示板に比べて読者同士のコミュニケーションが起きにくいが,「独自の調査によると,車の所有者同士でない限り,読者同士のコミュニケーションのニーズは大きくないことが分かった」という。TIIDAは新型車なので,まだ所有者は少ない。

 コミュニケーションが制約されたサイトは面白くないという意見もあるだろう。しかし,実際にTIIDA BLOGのトラックバックから読者のブログをたどってみると,試乗した人の「加速が物足りない」「大きな荷物を積みにくい」といった生の声が載っており,かなり参考になる。逆に「シートの座り心地がいい」といった賞賛や,既に購入して納車日を迎えた人の「喜びの声」も載っている。少なくとも筆者は,メーカーの押し付けではない消費者の声を読んで,購買意欲をかき立てられた。

 一方でカカクコムは,メーカーとは離れた立場でパソコンなど様々な製品について議論する電子掲示板「口コミ掲示板」を運営しており、1日約5000件もの書き込みがある。同社の穐田誉輝(あきた・よしてる)社長は,「掲示板に比べればブログに慣れている読者はまだ少ない。それに,パソコンのように仕様が定まっている商品に関するコミュニケーションの場合,自由に書き込める掲示板で質疑応答を促すほうが盛り上がる」とみる。

 穐田社長は,トラックバックが何十個と連なった場合に必要な情報を探しにくくなることも懸念。ブログの可能性を認識しつつ,活用できる場面を慎重に模索している。

 個人の情報発信ツールとしての評価がほぼ定まっているブログだが,商品・サービスの販促に活用する場合は商品特性とそれにとって必要なコミュニケーションをよく考える必要がありそうだ。

 ちなみに,このIT Proのコメント欄でも,読者の方から「感想はブログに書きました」という書き込みをいただくことがある。日経BP社内でも,「楽天消費動向研究所」はブログ形式を採用している。一方で,議論につながらないような単純なニュース記事をブログで発信しても意味がないかもしれない。我々もまた,記事のテーマなどによってコミュニケーションの仕方を工夫しなければならないと思う。

(清嶋 直樹=日経情報ストラテジー)