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(1)激震の中,小売業A社の通信サービスは動いていたのか
   →通信サービスはほぼ稼働し続けた

 インフラとなるデータ通信網は,今回の震災でおおむね稼働し続けた。

 NTT東日本は,基幹の通信網が長岡市の信濃川沿いの崩落現場で切断されるという甚大な被害を受けたが,冗長系へと即座にスイッチ。通信サービスを提供し続けたのである(関連記事)。電力系通信事業者の東北インテリジェント通信も小千谷からの基幹回線の電柱が地盤ごと流出。こちらも冗長系にスイッチすることでサービスを継続した(関連記事)。

 実際,筆者が取材した約10社のユーザー,2社のインテグレータは「専用線のサービスはほぼ正常に稼働し続けた」と教えてくれた。大手スーパーの原信では倒壊した店舗でさえもIP-VPNが生き続けた(関連記事)。

(2)IP電話は停電したら使えないのではないか
   →バッテリーの確保は必須,屋外でどう利用するかも要検討

 小売業A社の長岡の店舗は,同市内で電気が広範囲に止まったにもかかわらずたまたま停電を免れた。そのため,ネットワーク機器への給電がされ続け,IP電話を利用し続けることができた。

 新たな課題も見えてきた。今回の地震で分かったのは,建物の中でしか使えないIP電話の利用価値は限定的だということ。同社は余震の発生や建物の安全確認のため顧客とともに社員も店外へと避難。事務所内のIP電話をフル活用することはなかった。

 小売業A社の情報システム部門課長は,「もし本当にIP電話を震災対策として活用するのであれば,ネットワーク機器を稼働させるためのバッテリーや自家発電,そして屋外でも使える無線LAN接続の端末が必要だろう」と教訓を語ってくれた。長めのLANケーブルを用意し,屋外で端末を使えるようにするのも一つの手だろう。

(3)レジがつながっているISDNは規制されなかったのか
   →ISDNのパケット・モードは規制対象外

 ローソンのレジがつながっていたのは,ISDNのデータ専用サービスである「パケット・モード」。こちらは音声のISDNと異なり,「通信規制の対象外」(NTT東日本)。そのため「阪神淡路大震災で使えていた経験からISDNを利用していた」(吉田シニアマネジャー)。

(4)携帯メールは規制されなかったのか
   →iモードのメールは規制されなかった

 NTTドコモは今年1月,災害時を想定して,音声とメールやWebアクセスのiモードの系統を分離して規制をかけるようにした。これは携帯電話事業者としては初の取り組み。ネットワークの占有時間が長い音声を分離することで,メールやWebアクセスが規制に巻き込まれるのを極力抑えるのである。

 実際,「今回,データ系サービスは規制する必要がなかった」(NTTドコモの一場所長)という。ローソンは同社の携帯電話を採用しているが「今回の震災では100%メールを使えた」(吉田シニアマネジャー)と評価。また,原信の我伊野氏も,「地震直後は相手に届くまでに数十秒がかかっていたが,メールが送信できないということはなかった」と証言する。

 もちろんデータ網が輻そうしないという保証はない。そうなればIP電話やiモードもつながりにくい状態となるだろう。東京や大阪のような巨大都市で災害が起こった場合,通信網がどのような被害を受け,サービスを使い続けることができるかどうかも未知数だ。

 一つだけ言えるのは,複数の連絡手段を用意し,それぞれ利用する優先順位を明確にしておくことだ。今回の震災では,街中に限られるがPHSが使えたという証言もある(関連記事)。

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 強烈な余震が続く中,多くの企業や自治体の方に取材に応じていただいた。担当者の方々にお礼を述べたいと思う。また,被災された方々に心よりお見舞いを申し上げたい。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)