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 日経ソリューションビジネスの1月15日号で,「商談を獲得する2005年のキーワード10」という特集をまとめた。日経ソリューションビジネスはシステム・インテグレータをはじめとするソリューション・プロバイダ向けの雑誌であり,ユーザー企業にシステム提案している方々が中核読者だ。

 昨年の景気回復局面でもSI(システム・インテグレーション)サービスの価格引き下げ要求は強まるばかりだった。ただ,依然として値下げ圧力は強いものの,IT投資に見合う価値があればきちんと対価を払おうという意識が強くなっているとも取材で聞くようになった。

 そこでユーザーに価値を認めてもらえるシステム提案のためのキーワードという観点で,「個人情報活用」「BSP」「ポストERP」「オンショア」「レギュレーション(規制)」「RFID」「リアルタイム・エンタープライズ」「レガシー・マイグレーション」「オープンソース・ミドルウエア」「ユビキタス・インフラ」の10個を挙げた。

 「RFID」「レガシー・マイグレーション」「オープンソース・ミドルウエア」「ユビキタス・インフラ」については,言葉だけで理解いただけると思う。「レギュレーション(規制)」は,e-文書法や電子カルテの医療機関外での保存など,規制緩和によって生まれる新たなIT化市場という意味で挙げた。ここでは,残りの5つについて少し詳しく紹介したい。

個人情報保護から個人情報活用へ

 まず「個人情報活用」。2005年4月,個人情報保護法がいよいよ施行される。ソリューション・プロバイダは「情報漏洩対策ソリューションの提案に躍起になっている。しかし「個人情報保護法に対応するためにセキュリティ製品を導入しましょう」と提案したところで,「法律施行にかこつけて,あおっているのではないか」と猜疑心を抱くユーザー企業も少なからずある。

 そこで視点を変えて,個人情報の保護よりも,むしろ個人情報活用を前面に打ち出してはどうかということで,このキーワードを挙げた。情報活用を提案しつつ,その中に情報漏洩対策の機能も含ませる。こうすれば,“保険”としての後ろ向きな投資ではなく,攻めの投資として促せるのではないだろうか。

 「BSP」というのは弊誌の造語で,ビジネス・プロセス・サービス・プロバイダの略である。情報システムのアウトソーシングの一形態として,アプリケーションを期間貸しするASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)はすっかり認知された。今,人事・給与やコールセンターなど,業務とそれを支えるITをアウトソーシングするBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が注目されているが,それを期間貸しするサービスがBSPである。

 例えば,新日鉄ソリューションズでは,文書管理のASPサービスを提供しているが,デジタル化した文書データの保存,配信といったアプリケーション機能に加え,マイクロフィルムの図面情報や紙の書類についても,倉庫での保管,デジタル化といったサービスを提供している。これは新日鉄時代から蓄積した図面管理のノウハウを生かしたもので,まさにBSPと言える。業務ノウハウを持つソリューション・プロバイダにとってはチャンスが広がる。

 ERPは,中堅・中小企業の導入はまだこれからだが,大企業向けは勢いが衰えている。ソリューション・プロバイダにとって稼ぎ頭だった大企業向けERPのカスタマイズ・ビジネスは苦戦している。「ポストERP」のビジネスは,欧米のERP復活シナリオが参考になる。1つはSCMやCRMといったシステムとの連携にソリューション範囲を広げること。もう1つは,ERPの運用管理などのアウトソーシング・ビジネスに転換することだ。

中国はオフショア開発の拠点から市場に変わる

 「オンショア」は,オフショアのいわば逆張りで挙げた。ユーザーからのシステム開発の値下げ要求に応えるため,ソリューション・プロバイダはオフショア開発を積極的に進めている。実際,中国でのオフショア開発は年々倍増の勢いで増えている。しかし既に,中国の都市部の技術者の賃金は上昇しており,以前ほどコストメリットを出せなくなりつつある。

 国内のソフト開発会社を使い,仕様変更への対応など顧客の要求に機動的に応え,納期や品質で勝負できれば,単なる価格のメリットを上回る価値をユーザーに提供できる。国内でのオンショア開発を見直してよいのではないだろうか。

 今後の中国はむしろ,市場として有望になるだろう。ワークスアプリケーションズは今年3月までに,人事給与ソフトを中国向けに出荷するが,現地化に必要な追加機能の開発はわずか数%に過ぎなかったという。意外な気もするが,日本で培った業務アプリケーションを中国に輸出するハードルは業務によってはさほど高くはない。

 「リアルタイム・エンタープライズ(RTE)」はここ1~2年,米国で注目が高まっている企業情報システムのコンセプトだ。CRMやERPなど複数のシステム間でリアルタイムに情報を共有することによって,企業の業務プロセスに俊敏さを提供する。

 例えば,ある米航空会社では,空港の係員が,旅行予約データや運行スケジュール,飛行機のメンテナンス情報など接客に必要な情報をリアルタイムに入手できるようにした。これにより,飛行機の出発が遅れる場合,係員は予約客の中から優良顧客を探し,その顧客にとって最適な代替策を探して案内するなど,接客レベルを大きく向上させることができたという。

 欧米型のSCMが日本の製造業にそれほど浸透しなかったのは,時々の状況に応じて現場担当者の判断や外部とのすり合わせによって計画を微調整するといった日本型の仕事のやり方になじまなかったことが大きな要因だ。RTEは日本企業にこそ向いているのではないだろうか。

(森重 和春=日経ソリューションビジネス)