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 一つには,前回の提起編でも触れたトップのITに対する姿勢の問題があります。


まずは幹部の意思不統一と無理解。システムは魔法ではないのに,過剰な期待をかける割に費用や時間は削られる一方。 短期開発を求められる割に,経営層の意向がコロコロ変わり,要件を絞れないまま納期順守のみを言明される。社長がシステムの必要性を分かっていても,幹部に浸透せず,結局根回しなどの社内政治にばかり時間がかかる。その上,経営層側のメリットのみを追及して,現場サイドの意向や利便性が犠牲になっている。 そして今,まさに,役に立たないだろうシステム開発に取り掛かります(苦笑) 受注システムを3カ月で要件定義からカットオーバー・・・って・・・。
(ユーザー)


技術的な問題よりも政治的,社内力学的な問題でした。役員が新しい人に代わるときに,前任者と揉めたため,前任者が作ったシステムは絶対に使わないということになってしまった。社長もそれを黙認した。
(ベンダー)

 あるユーザーの方からは一言,トップならぬ「親会社の意向」によって役に立たないシステムを導入した経験があるというご意見もいただきました。連結経営を念頭に,グループ会社全体のシステムの一元的な管理を進めたり,シェアド・サービスと呼ばれる共同利用形式で,一気にグループ会社のシステム統合を進めるケースが増えています。記者も,ITガバナンスの視点から全体最適の必要性を強調することがありますが,全体最適の実現も一筋縄ではいかないようです。

 トップの仕事は,システムに関して間違った判断を下さなければよいというものではありません。システムが生かせていないなら,そしてそのシステムの持つ可能性が大きいなら,システムを生かすために組織を変えることも,トップの仕事に含まれます。


システムを活かすための組織立てが整っていないことが最後・最大のハードルではないでしょうか。「記者の実体験として掲げた2社については,むしろIT活用に積極的に取り組んでいる企業という印象を受けている」とのことですが,現場はついてきていますか? 現場がついてきていないのであれば,いくらトップが良い考えを持っていても活かすことはできません。システムそれ自体が良いものであるなら,それをいやでも使わねばならないように仕向けるのは経営者の仕事のハズです(例えば,使っているかどうかを個々人の査定に反映させるとか)。それが「組織作り」ということです。それをなおざりにしたまま,「現場が使わない」と嘆いても始まりません。そういった「組織・仕組みを作ること」こそが,経営者のやるべき最大の仕事だと思います。
(ユーザー)

 とはいえ,今の日本でシステムやITを理解するトップが多いとは思えません。2004年12月27日号の日経コンピュータ本誌「動かないコンピュータ」では,ETCの夜間料金割引を巡る問題を取り上げました。詳しくは,本誌の記事をお読みいただきたいのですが,このトラブルが起きたきっかけは,小泉純一郎総理大臣の選挙公約でした。IT立国を標榜する国のトップにして,システムへの理解が高くはないのが現状なのです。

使い手を考える力が欠けている

 役に立たないシステムを生むのはトップだけではありません。トップとの関係では悩まされることの多い,システム部門に対する視線にも厳しいものがあります。多かった意見の一つに,システム部門が現場の実状を無視している,というものがあります。使い手の立場を慮る姿勢が欠けているというと言い過ぎでしょうか。