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 NTTの対抗軸として,もはやソフトバンクは無視できない存在となった。ADSL事業の成長と日本テレコムの買収によって,2月9日に発表した四半期の売上高は2500億円を突破(関連記事)。年間ベースで「1兆円クラブ」への仲間入りを果たした。そして,携帯電話事業への参入では,総務省を訴え,NTTドコモやKDDIとは激しい舌戦を展開中である(関連記事1関連記事2)。

 こういった激動のさなか,筆者は日経コミュニケーションの2月1日号でソフトバンク1社を取り上げる特集を執筆した。タイトルは「ソフトバンクの舞台裏――孫社長を支える9人の仕事師」。孫正義社長の言動は,連日のように各種メディアをにぎわしている。しかし,孫社長の言動だけを見ていては,ソフトバンクの次の一手を知ることはできない――というのが,特集を書いた狙いである。ソフトバンクはどのように通信事業を切り盛りしているのか,どういった総合通信事業者を目指しているのか。集められる限りの情報で明らかにした。

あまりにもNTTと違うソフトバンク

 取材を進める前に,まずソフトバンクとNTTそれぞれのグループを比較してみた。日本だけでなく世界の通信業界の代表ともいえるNTTグループと比べることで,何かが浮かび上がってくるのでは,と思ったからだ。

 どの側面から見ても両者はあまりにも違った。まず最初に驚いたのがソフトバンクの少数主義。持ち株会社であるソフトバンク本体は従業員がたったの70人弱しかいないのである。資金の調達や広報・IR活動などで,ソフトバンクBBなど傘下の事業会社の運営をサポートする。株式を保有しているグループ会社は国内外に500社以上あるという。

 一方,NTTグループの持ち株会社は,研究員を抱える研究所を含んで3000人の陣容。単純な比較は意味をなさないかもしれないが,約40倍の開きがある。そして,グループ全体も見てみた。こちらはソフトバンク・グループが約5000人に対して,NTTグループが約20万5000人。こちらもおよそ40倍(注1)

注1:ソフトバンク・グループの従業員数は2005年度に倍増し,1万人規模となる。買収し傘下に収めたた日本テレコムとケーブル・アンド・ワイヤレスIDCの社員,3000人を予定している新卒社員が加わるからだ。

 収益構造もまったく違う。2003年度の売上高で比べると,NTTグループがソフトバンクの20倍。つまり,ソフトバンクは従業員当たり,NTTの倍の1億円を稼いでいる。半面,営業利益はNTTが1兆円規模でソフトバンクは顧客獲得コストが重くのしかかり赤字の連続・・・。

 ソフトバンク傘下の日本テレコムのデータを見てみると,NTTグループとほぼ同じ傾向だった。ソフトバンクは通信事業者というよりも,小売業や商社など薄利多売型の業種に近いようだ。株式市場での分類は“本業”であるソフトウエア流通業の「卸売業」である。NTTなど「情報・通信」とは異なるルーツを持つのである(注2)

注2:ちなみに,ソフトバンク本体社員の平均勤続年数はなんと2.7年。労働組合はやはりない。NTT持ち株会社は13.7年。グループに主要労組が六つある。

孫社長の役員職は意外と少ない

 いよいよ本題のソフトバンク・グループの通信事業について,組織とキーマンを調べることにした。

 ソフトバンクやソフトバンクBBは,筆者が知りたい組織図を公開していなかった。組織が変わり過ぎるので,普通の会社のようにきちっとしたものを作っていないようである。しかし,「ソフトバンクBBと日本テレコム,ヤフーがあって・・・」みたいなWebページを見て誰でも作れる図を乗せてもしょうがない。会社を見るだけでは,「やはり孫社長が舞台を動かしているんだね」から踏み込めないからだ。だが,今のソフトバンクの実像はそうではなさそうだ。