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 事務所に戻ったとき,編集部のアシスタントが話しかけてきた。「さきほど電話があって,テレビに出てほしいと言ってました。電話番号はこのメモに書いてあります」。メモを見ているとアシスタントが聞いた。「テレビに出るのですか」。筆者は答えた。「出ませんよ。顔を知られると記者の仕事がやりにくくなるから」。

 仕事が色々とあったので,すぐには電話をかけなかった。夕方になって,また電話がかかってきた。「××と申しまして○○という番組を作っています。朝9時からの生放送に出ていただきたいのですが」。いきなり断るのも失礼と思い「テーマは何でしょうか」と聞いてしまったのがまずかった。

 先方は「西暦2007年問題に関してです」と言ってきた。困ったので「一晩考えさせてほしい」と言って電話を切った。一晩あれこれと考え,翌朝になって「出ます」と返事をした。悩んだ結果,出ることにしたのは「IT(情報技術)の西暦2007年問題」という言葉がIT産業に広がってしまった責任があると思ったからである。こう書くと格好いいが,もう一つ「日経ビズテックという雑誌名を流してもらおう」という下心もあった。

 筆者は今から2年前の2003年4月1日に「『西暦2007年問題』の解決策を募集します」というコラムをIT Proにて公開した。ほぼ同時期に,日経ビジネスEXPRESSというWebサイトに掲載したコラムにおいてもこの問題について言及した。筆者が書いたのはこれら2本のWeb用コラムであり,紙(雑誌)には書かなかった。古巣の日経コンピュータ編集部の記者に「このテーマで特集をやってはどうか」と提案したが実現しなかった。つまりITの2007年問題の発祥の地はここIT Proである。

 4月にコラムを書いたものの,2003年の1年間,筆者は新雑誌「日経ビズテック」の開発に注力しており,ITの世界からはやや離れていた。2003年後半になってからだろうか,時間に余裕があったときなどに,いくつかのIT関連説明会に参加してみると,説明の際に2007年問題という言葉を聞くことが数度あった。「いわゆる2007年問題に対処するため××が必要になります」といった具合である。××には製品名あるいはサービス名が入っている。「いわゆるって,出所はどこなのだろう。まさか,あのコラムか?」と思ったものだ。

 その後も,2007年問題という表現はあちこちに出現するようになった。弊社の雑誌においても「2007年問題というものがある」という前提で,それを論評したり,関連記事を掲載するようになってきた。苦笑いせざるをえなかったのは「2007年問題についてユーザーの評判は悪い,新システムへ移行させようとするベンダーのセールストークとみているからだ」という解説記事を見たときだ。「ベンダーはそういう主旨で使っているのかもしれないが,最初に言い出した人の真意を確認してから書いてくれないかなあ」と思ったものである。ちなみに,最初に言い出した人はCSKの有賀貞一氏である。

違和感から反省文を書く

 このようにIT産業で使われ,弊社の雑誌の記事にもちらちら出てくるのだが,真正面から誰も取り上げない。気持ちが悪くなったので,その違和感と最初の種をまいたことに関する反省文を書いた。それが最初のコラムを書いてからほぼ1年後の2004年3月23日付で公開した「今ここにある『ITの2007年問題』」というコラムである。公開場所は日経ビジネスEXPRESSなど,ビジネス系サイトであった。申し訳ないことに,IT Proの読者の皆様に向かっては何も書かなかった。

 そのコラムの中で筆者は次のように書いた。



 筆者が2007年問題という誤解を招きかねない言葉をあえて使ったのは,企業の経営者に「システムの肥大化・老朽化とベテランの減少」という問題を認識していただきたかったからだ。かつての2000年問題を連想し,経営者が関心を持つと考えたのである。

 ところがそうした事態にはまったくならず,「2007年問題に備え,古いシステムを新しいものに入れ替えましょう」といった具合に,IT業界の宣伝文句として使われるようになってしまった。筆者がバカであったということだ。


 これを書いてからさらにまた1年が経過したが,事態はさほど変わっていない。IT業界でだけ,この言葉は使われ続けており,日経コンピュータで大きな特集まで組まれた。だが企業の経営者が「システムの肥大化・老朽化とベテランの減少」問題に意識的になった気配はない。IT関係の発表会やセミナーなどで2007年問題という言葉にぶつかると,うつむきたくなってしまう。

 そうした中,テレビ出演の話が来た。放映の時間帯は朝9時から9時30分,経営者は出社している時間帯である。それでもIT業界の人ではない,一般の人が「システムの肥大化・老朽化とベテランの減少」問題を認識するようになるかもしれない。2007年問題という言葉をITの世界に持ち込んだ責任を多少なりとも果たせるだろう。こういったわけで,テレビに出ることにしたのである。

システムの問題を素人にどう説明するか

 前置きが長くなった。ここからが本題である。筆者は「情報システムの肥大化・老朽化が進むとともにシステムを長年支えてきたベテランが減っていく問題」はあると思っている。「そんな問題などない」という人もいるだろうが本稿ではその議論はしない。問題の有無とは別に,この問題に2007年問題という言葉をあてた是非が問われるが,それについても今回は立ち入らない。

 本稿のテーマは「『システム肥大化・老朽化およびベテラン減少問題』をITの非専門家にどうやって説明するか」というものである。IT Proの読者の多くは,企業情報システムの設計・開発・運用に関わっていると思うが,ご自分の仕事内容を素人の経営者や知人にどう説明されているだろうか。