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 ユーザー系の大手インテグレータを取材したときのことだ。仮にX社としておこう。「『プロマネなんてなりたくない』。こう言い出す若手が増えて困っている」。X社で人材育成を担当する部長の一言に,記者は少々面を食らった。プロジェクト・マネジャ(プロマネ)は,「ITエンジニアの花形」「すべてのSEが目指す人気職種」と,なんとなく思いこんでいたからだ。

 ところが,X社の部長によると,「最近の若手SEの人気職種は,『コンサルタント』か『アーキテクト』。プロマネ志望は,少数派に転落した」とか。同社は,数年前に掲げたプロマネ育成目標の下方修正も考え始めた,という。

 世間では,数年前から続くプロジュクトマネジメント・ブームは,いっこうに収まる気配をみせない。本屋には,「プロジェクトマネジメント」を扱った本が何十冊もならび,関連セミナー/スクールも花盛りだ。プロマネの国際資格「PMP」の取得数も年々増えている。

 はじめ記者は「プロマネが不人気なのは,X社だけの現象ではないか」と考えた。だが,編集部に戻って,同僚にその話をすると,「Y社の幹部も,プロマネ志願者が少なすぎる,と嘆いていた」「この間,Z社のプロマネと飲んだら,『もう止めたい』とこぼしていたぞ」と,似たようなネタが次々と出てきた。

 「プロマネ=チャレンジしがいのある人気職種」という図式は虚構だったのか。真実を知るには,当事者に会うしかない。さっそく若手・中堅のプロマネたちを取材してみた。すると,プロマネ職の現実がおぼろげに見えてきた。

「やりがい」だけでは,やってられない

 「確かにプロマネ仕事は,やりがいがある」。最初に会った,30代後半のAさんは,記者の質問に即答した。X社はやはり例外だったのか・・・。そう思うまもなく,次の言葉が続く。「でもね,高下さん。ウチの会社だけかもしれないけど,プロマネって割に合わないんですよね」

 Aさんは続ける。「プロマネ,プロマネとおだてられているけど,実態は『現場の便利屋』に近い。何の権限もないのに,トラブルの責任だけは負わされる。正直,『これじゃ,やっていられない』と思うことがありますよ」

 Aさんが勤務するメーカー系インテグレータの場合,現場のプロマネには必要な権限が全く与えられていないという。「お客様の要望で工数が膨み,社内や協力会社の人員をプロジェクトに追加投入しようとしても,いちいちラインの部長や間接部門に理由や根拠を説明し,許可を得なければならない。それなのに説得に手間取って,プロジェクトが火を噴くと,自分の責任となる。政治力がないといえばそれまでだが,あまりにも体質が官僚的すぎる」

 次に会った30代半ばのBさんも,Aさんに同調する。「自分の仕事には誇りを持っている」と言うBさんも,周囲のサポートが得られない状況には,かなりおかんむりだった。「プロジェクトの内容はどんどん高度になるのに,与えられた期間は短くなる一方。それなのに,会社は昔の感覚で『現場の裁量の範囲で工夫して乗り切れ」というばかり。PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)はあるけれど,細かな報告を要求するばかりで,イザというときはもまったく役に立たない」

 Bさんは返す刀で,発注者である顧客側もやり玉に挙げる。「スリム化の一環で,担当顧客のシステム部門は3年で人数が2割減った。今では,利用部門間の調整さえ満足にできない状況だ。そのしわ寄せが全部,ベンダーのプロマネに来ている。これだったら技術だけに責任を持てばよいアーキテクトのほうがよっぽど楽に思える」

責任だけは重くなる一方

 正直,記者にはBさんの話がいまひとつピンとこなかった。そこで日経コンピュータの連載でお世話になった,PMリサーチの岡村 正司氏に相談したところ,次のように謎解きしてくれた。岡村氏は数多くの大規模プロジェクトを成功に導いてきた,日本有数のプロマネだ。

 岡村氏によると,問題の根底には,アウトソーシングなどに伴い,顧客側のプロジェクト推進力が落ちていることがあるという。「昔に比べると,ベンダー側のプロマネがカバーするべき領域が広がっている。このため一人ひとりのプロマネに過大な負担がかかるケースが増えている」とした後に,こう続ける。「これに対処するには個人の力だけでは難しく,組織的なアプローチが欠かせない。しかし現状は,プロマネが徒手空拳で対処している」

待遇も報われない

 別のプロマネのCさんは報酬に対する不満を口にした。「仕事で付き合いがあるコンサルタントやセキュリティ専門家の稼ぎっぷりを見ていると,プロマネは仕事量や責任の割には見返りが少ないなあ,とふと思ってしまう」

 プロマネの報酬には,Bさんもこぼしていた。「死ぬ思いでプロジェクトを成功させても,会社は『成果は査定に反映させる』と言うだけ。でも,査定のやり方そのものがあいまいだし,そもそも当社の仕組みでは,昇給やボーナスにそれほど差がつくわけでもない。これだったらプロマネなどにならなかったほうがよかった」

 前出の岡村氏は,「求められる能力や責任に対して,プロマネの報酬は安すぎる」と指摘する。「金がすべてではないにしても,プロマネという職業に優秀な若手を呼び込むためには,報酬は重要なポイント。本来プロマネはコンサルタントと同じように,成果に応じて対価をもらえる立場にあるべきだ」

皆さんの考えを教えてください

 AさんやBさん,そしてCさんという,たった3人の証言だけでは,にわかに判断は下せない。だが,もし多くのプロマネが3人のような過酷な状況で仕事をしているとしたら,ゆゆしき問題だ。孤立するプロマネ,プロジェクトは破綻,顧客は怒り心頭,メンバーは心身ともに健康を損なう――こうした悲惨な状況が各所で起こりかねない。

 プロマネは本当に過酷で人気のない職種なのか――。IT Pro読者の皆さんにお伺いしたい。プロマネ職にある方には現在の労働実態を,そしてプロマネ職でない方にはそのお考えを,以下のアンケートでご回答頂ければと思う。その結果を基にプロマネ問題をもう少し深く掘り下げ,日経コンピュータの誌面やIT Proを通じてフィードバックしたい。何とぞ,ご協力よろしくお願いします。

(高下 義弘=日経コンピュータ)