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選択肢:その2 PHSに乗り換える

 携帯電話以外のPHSに乗り換えればいいのでは,という考え方もある。

 これには十分な価値がある。

 PHSは携帯の第2世代と同様に,データと音声を分離して制御している。

 例えば,ウィルコムの場合,バックボーンはデータが独自で,音声がNTT東西地域会社のISDN。そのため,音声はISDNの規制の影響を受けることがあるが,データは比較的余裕がある。実際,「今回は規制をしていない」(ウィルコム)ため,メールはほぼ100%使えていたものと思われる。また,音声通話に関しても,ISDNの規制が携帯電話より短時間かつ範囲が限定されていたため,携帯電話よりもPHSのほうが音声通話をしやすかっただろう(注2)

注2:ISDNはNTT東日本の加入電話と同様の規制を受けるが,震災後は県外から「043」や「047」など千葉県の一部地域にかける通話,千葉県内の通話が規制されるに留まった。つまり,都内間でのPHS通話は影響を受けなかった。

 ただし,PHSでは大規模な停電時に注意が必要だ。PHSは基地局への給電がストップすればサービスを利用できなくなる(注3)。停電対策に約2割の基地局にはバッテリーを搭載しているが,使い果たしてしまえば停止してしまう。

注3:携帯電話の場合,自家発電機を備えている基地局がある。また,電波の届く範囲が広く基地局の数がPHSより少ないため,電源車を配備して対処をしやすい。

選択肢:その3 伝言サービスを活用する

 家族の安否を確認するのが目的であれば,東西NTTの災害用伝言ダイヤル「171」や携帯電話各社の災害用掲示板を利用するのも有効だ。震度6弱以上の地震が発生した場合などの非常時に限って運用している。

 災害用伝言ダイヤルは171番をダイヤルすることで,自宅の電話番号をキーに伝言を録音したり再生したりできるサービスだ。全国の東西NTTに分散的に配置した伝言録音用のサーバーで運用している。そのため,被災地の電話が大混雑していても,伝言を登録したり聞いたりできる。被災地から外にかける通話も比較的余裕がある。

 災害用伝言ダイヤルは家庭だけでなく企業での社員の安否確認にも有効だろう。

 例えば,自動車会社のスズキでは「171番を利用することを徹底している。グループ単位で作成している連絡網に171番のキーとなる番号を記入。利用する訓練も実施している」という。

 また,空調機器メーカーのコロナの今井辰夫総合企画室次長兼IT企画チーム課長は昨年7月13日に発生した新潟・三条の水害で,実際に171番を活用した。具体的には,メッセージとして自宅のメール・アドレスを登録。災害時も利用できた自宅のブロードバンドを使って,多くの関係者と情報を交換したという。

複数手段に優先順位を付け,日頃から訓練

 いま第3世代の携帯電話を利用しているユーザーが,災害時のメールのためだけに第2世代の端末やPHSに買い換えるというのはあまり現実的な話ではないだろう。

 そこで考えられるのが,171番の伝言サービスなど複数手段の利用を普段から想定しておくことだ。普段から家族で「携帯や固定電話がつながらない場合は携帯メール,それでもダメな場合は171番」というような優先順位を示し合わせておくのも重要だ。今一度,家族の連絡体制を見直してみてはいかがだろうか。

 どんな人でも家族の安否が確認できなければ,企業や官公庁の災害復旧に参加できないだろう——。東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センターの目黒公郎教授はこう警鐘を鳴らす。

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 災害に強い171番であるが,完璧というわけではない。NTT東日本の災害対策責任者であるネットワーク事業推進本部サービス運営部災害対策室の東方幸雄室長は「できれば被災地の住民の方から率先して171番の安否情報を登録してほしい」という。

 大災害の発生時には,知り合いが安否を心配するいわゆる「見舞い呼」が多く発生する。これは災害用伝言ダイヤルでも同様だが,録音できるメッセージの件数に限度があるという(関連記事)。つまり,見舞い呼でメッセージが満杯になって,被災地のユーザーが安否のメッセージを登録できなくなる可能性がある。いままでの災害ではメッセージ容量不足の問題は発生しなかったが,首都圏で大災害が発生した場合にはその危険性が高まる。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)