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 平安と静寂を求める人を除けば,誰もが旅客機内で携帯電話機の利用を許可することや,技術的な詳細を詰めることに賛成するだろう。しかし米国政府は,テロリストが旅客機から地上や別の旅客機,同じ機内にいる仲間に電話をして連携することを心配している。テロリストが旅客機に仕掛けた爆弾を,携帯電話機で遠隔操作して爆発させる可能性もあるというのだ。

 ばかばかしいにもほどがある。これまで何度も「悪事に利用されかねない」という理由で特定の技術がやり玉に挙がり,利用を禁止したり制限したりする羽目になった。このような対応には,ある技術を禁止または制限した時点で有効活用もできなくなるという問題がある。セキュリティは常にトレードオフだ。ほぼすべての技術が,よいことと悪いことの両方に使える。著作「Beyond Fear」の中で,私はこの性質を「相対する利用(dual use)」と呼んだ。ほとんどの場合,善用は悪用よりもはるかに重要である。社会としては善用を受け入れ,何らかの方法で悪用に対処した方が賢明だ。

 自動車を使えば銀行強盗が素早く逃走できるからといって,自動車の利用を禁止するようなことはない。麻薬の売人が取り引きの打ち合わせに使うとしても,携帯電話機を禁止しない。誘拐犯がお金を要求するからといって,お金を禁止することはない。そして悪人が密かに通信するために暗号を使うとしても,暗号を禁止しない。いずれの例において,技術を利用することで社会が得るメリットは,技術を制限したり,無力化あるいは禁止したりすることで得られるメリットよりもはるかに大きい。

 そして当然,攻撃者が戦略を少し変更すれば回避できるようなセキュリティ対策は,よいトレードオフといえない。旅客機内で携帯電話機の利用を禁止することは,テロリストが搭乗中に携帯電話機の利用を計画している場合にのみ効果的だ。携帯電話機が使えなければテロリストはほかの方法を考えるので,攻撃の妨げにならない。テロリストが旅客機と地上とで通話することを計画していなかったり,そもそも旅客機の利用を考えていなかったら,旅客機内で携帯電話機を禁止しても意味がない。さらに悪いことに,セキュリティ対策における携帯電話機の有効活用の道までふさぐことになる。

http://australianit.news.com.au/articles/...

鋭いナイフのリスクに関する全く同じ議論:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/4581871.stm
私のコメント:
http://www.schneier.com/blog/archives/2005/06/...

Copyright (c) 2005 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「Risks of Cell Phones on Airplanes」
「CRYPTO-GRAM June 15, 2005」
「CRYPTO-GRAM June 15, 2005」日本語訳ページ
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◆この記事は,Bruce Schneier氏の許可を得て,同氏が執筆および発行するフリーのニュース・レター「CRYPTO-GRAM」の記事を抜粋して日本語化したものです。
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。