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 日本のゴールデン・ウィーク中に,新種のコンピュータ・ワーム(呼び方は「VBS.LoveLetter.A」「VBS/LoveLetter.worm」「I LOVE YOU」「LOVELETTER」などさまざまだが,ここでは「I LOVE YOU」を使う)が世界で蔓延した。

 日本でも連休明けの7日には,相当数の企業から感染例が報告される可能性が高い。ただ見方を変えると,日本は幸運だったとも言える。連休中に会社や自宅のパソコンを使った人は,通常よりもぐっと少ないはず。被害が本格化するとすればこれからだが,マスコミの報道などで事前に承知していれば,「I LOVE YOU」メールの添付ファイルを開くことはないだろう。開かずに捨ててしまえば,問題は生じない。

 米国時間5月4日早朝に最初の感染例が報告されて以来,この原稿を書いている6日までに世界中で4500万台のパソコンが感染したとされる。ちなみにワームの発信源とされる東南アジア(フィリピンともいわれる)に近いオーストラリアでは,全パソコンの80%,米国では40~50%が「I LOVE YOU」メールを受信したという(感染したとは限らない)。

 このワームは,Outlookのアドレス帳を介して感染を広げている。感染すると画像ファイルやオーディオ・ファイルなどが破壊されてしまう。各紙の報道によれば,被害総額は全米で30億ドル近くに達するというが,以前に本コラムで紹介したように,ネットワーク・セキュリティ関連の被害額は誇張される場合も多いので,本当のところは誰にも分からない。

 実は筆者も「I LOVE YOU」メールを受け取ったが,幸いにも被害(感染)は免れた。経緯はこうだ。4日朝に,全く知らない女性の名前で「I Love You」と書かれたメッセージが届いた。「新しい広告の手口かな。後で開けてみよう」と思いつつ,他のメールの処理に追われているうちに,存在を忘れてしまった。後でテレビのニュースでことの重大さを知り,慌ててメール・ボックスから消去した次第である。

 インターネット関連企業で働く知人には,何と56通も届いたそうだ(用心深い人なので,被害は免れた)。「僕のところには1通しか来なかった」と言ったら,「フン」と鼻の先で笑われてしまった。彼の会社では社員同士が,何通届いたか自慢しあってるそうだ。別に自慢することではないと思うのだが,ネット業界で働く人にしてみれば,数が多ければ多いほど,サイバー・スペースでの顔の広さを意味することになるのだろう。

 それにしても,全く見知らぬ相手から届いたラブレターを,なぜ本気にする人がいるのだろうか?

 ある知人はこう解説してくれた。それはオフィス・ラブへの願望が根底にあるからだという。要するに自分は彼女(彼)を知らないけれど,同じ社内の違う部門で働く彼女(彼)は自分を知っていて,人知れず思いを寄せていた…こう解釈するらしい。真偽のほどは分からないが,「人間は自惚れ(うぬぼれ)が強い動物」という解釈には妙に納得させられる。

 ところで,「I LOVE YOU」メールの犯人探しは意外な速さで進展している。昨年3月に蔓延したワーム「Melisa」の犯人を付きとめたスウェーデンの科学者Fredrik Bjorck氏が今回も,「犯人はフィリピン在住のMikaelという20代ドイツ人男性」と特定した(ただし,最終的に確認された訳ではない)。FBIの捜査でも,フィリピンに住む男性が浮上しているという。

 捜査当局にとって悩ましいのは,類似ワーム(亜種)が出回り始めたことだ。「Mother's Day」や「Very Funny」を始め,8種類が蔓延し始めている。なかには「今晩,一緒にお茶でもいかが」という,リトアニア語で書かれたメールもある。いずれにせよ,誤って開けると大きな損害を被るので注意が必要だ。

 後発の亜種は「I LOVE YOU」メールよりも,強い破壊力を持っている。「I LOVE YOU」の被害に遭ったところで,画像・音楽ファイルを失う程度のダメージだが,亜種のワームには「.bat」「.ini」といった初期化ファイルを破壊するものも存在する。下手をするとパソコンが起動しなくなってしまう。

 ゴールデン・ウィークが終わり,これから仕事に取りかかろうとしている読者の皆さんも多いことと思う。くれぐれもメールの添付ファイルには用心して頂きたい。

(小林雅一=ジャーナリスト,ニューヨーク在住,masakobayashi@netzero.net