「Athlonプロセサの出荷個数を,四半期ごとに2倍にする」。米Advanced Micro Devices(AMD)のW. Jerry Sanders III会長兼CEOは第1四半期の決算発表の席で,Athlonに関して強気の見通しを明らかにした。

 Athlonの出荷台数は第1四半期に前期比50%増の120万個だった。第2四半期も前期比50%増の180万個を見込む。四半期ごとに50%増のペースだが,これを今年後半は100%増に引き上げる考えだ。つまり,第3四半期には360万個,第4四半期に720万個のAthlonを生産することになる。通年の生産個数は1380万個に達する。同社が2000年に出荷する予定のx86プロセサは2500万個なので,Athlonが過半数を占める訳だ。ちなみに記者会見では,年間2500万個の出荷予測を上方修正する可能性を示唆した。

 同社が従来から掲げる目標は「2001年にx86プロセサ市場におけるシェアを30%にする」ことだが,記者会見ではアナリストから「工場のキャパシティが不足するのではないか」との質問が飛んだ。この件については,「問題ない」として新工場の建設は予定していないことを明らかにした。間もなく操業を始めるドイツのドレスデン工場は,マイクロプロセサを年間5000万個製造する能力を備えているといわれる。製造能力に関しては,しばらく問題はなさそうだ。また,宿敵Intel社が2000年に60億ドルもの半導体投資を行うことについては,「投資したからといってすぐにアウトプットがあるわけではない。パソコン市場のパイが拡大しているので,Intel社の投資がAMD社の業績に影響を与えることはない」(Sanders会長)とした。

 Intel社と繰り広げる動作周波数競争に関しては,「2001年1月に1.5GHz」という目標を掲げた。現在開発中のAthlon改良版「Thunderbird(開発コード名)」あるいは「Mustang(開発コード名)」で実現する。いずれも,2次キャッシュをプロセサ・チップに集積して性能向上を図るx86プロセサである。前者は2000年第2四半期,後者は今年中の量産出荷を予定する。

 第2四半期には,低価格市場に向けたAthlon派生品「Spitfire(開発コード名)」の出荷も始める(現在はサンプル中)。ThunderbirdとSpitfireは,同社のオースチン工場(米国テキサス州)とドレスデン工場(ドイツ)で製造する。ともに0.18μmルールの半導体技術で製造するが,前者の工場ではAl(アルミニウム),後者ではCu(銅)を配線材料に用いる。

 AMD社はSpitfireを「Celeronキラー」と位置づける。一時はIntel社を圧倒したものの,このところ急速にシェアを奪われている米国小売店での巻き返しを図る。同社は過去に,同一性能のx86プロセサであれば価格をIntel社よりも25%低くするという戦略を採っていた。「利益よりもシェア」だった。ところがIntel社が値下げ攻勢に出たためにAMD社の業績は急激に悪化し,このところはAthlonを軸にした「利益優先」に方向転換していた。Spitfireの投入で,「利益だけではなく,シェアも伸ばす」(Sanders会長)戦略に切り替える。

 Intel社との正面衝突によって再び傷つく可能性もあるが,「AMD社はIntel社の重力圏からすでに脱した。Intel社に引きずり降ろされるレベルは超えた」というのがAMD社の判断という。

 業績に直結するx86プロセサの平均単価(ASP:average selling price)は現在90ドルに近づいてきているという。第2四半期には100ドルを超えると予測する。ASPが78ドルにまで下がり,赤字にあえいでいたころとは様変わりの状態である。