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 米Lucent Technologiesは米国時間3月8日に,研究開発部門ベル研究所(Bell Labs)の研究チームが,電気抵抗が特定の温度以下でなくなり,超電導物質となる世界初のプラスチック素材を発見したことを明らかにし,詳細を英国の科学雑誌「Nature」の3月8日号に発表した。この物質は華氏-455度(摂氏-235度)で電気抵抗がなくなるという。ベル研の超伝導プラスチック

 写真は左からAnanth Dodabalapur氏, Zhenan Bao氏,Christian Kloc氏(出典は下掲のニュースリリース)。この素材は安価で,将来的に量子コンピュータや超電導電子機器など,幅広い用途が考えられる。超電導物質となる有機ポリマーを見つけるための研究は20年前から行われてきた。電気を通す有機ポリマーは1970年代に発見されている。例えば,昨年のノーベル化学賞はプラスチックの電導体を発見した白川英樹氏が受賞した。この物質は有機素材で,ある程度の電気抵抗を備える。

 ベル研が発見した物質は導電性高分子の一種「ポリチオフェン(polythiophene)」。ベル研によると,プラスチックの超電導物質生成における課題は,必要な電子の動きを妨げるポリマーの複雑な構造(ゆでたスパゲティの捻れに似ている)を克服することだったという。ベル研はポリチオフェンを含む溶液を作ることで,この課題を克服することができた。ポリチオフェンの薄膜を基盤層に配置すると,ポリマーの分子はゆでる前のスパゲティのように列状に並ぶ。化学物質を混ぜて素材の電気特性を変えるという通常の方法の代わりに,ポリチオフェンから電子を取り除くという新しい方法が採用された。

 ポリチオフェンが超電導物質となる華氏-455度という温度はかなり低いが,将来的にポリマの分子構造を変えることで温度を上げることができると科学者たちは楽観的に見ているという。

 ポリチオフェンは室温で電導物質となることができ,これまで光電子部品やスマート・ピクセルを作るのに使われてきたが,今後登場するさまざまな超電導プラスチックの最初の素材となる可能性がある。

 「我々の方法を使えば,多くの有機素材が超電導物質となる可能性がある」(研究に加わったベル研究所の科学者Zhenan Bao氏)。

[ベル研発表資料]
[発表資料]