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 米Lucent Technologiesの研究開発部門米Bell Labs(ベル研)の研究チームが,フラーレンから比較的高温で電気抵抗がなくなる有機超電導体を作ることに成功した。この物質は117Kelvin(華氏-249度,摂氏-156度)以下で超電導となり,2000年に記録された52Kelvinの(華氏-366度,摂氏-221度)に比べ,倍以上高温になったという。これにより,冷却に液体ヘリウムではなく,安価な液体窒素を使うことができる。同社が米国時間8月30日に明らかにしたもので,詳細を米国の科学雑誌「Science」のWWWサイト「Science Express」に発表した。

 フラーレンとは,サッカー・ボール状に炭素原子が結合した分子。炭素原子60個からなるC60などがある。その形が,米国の建築家R. Buckminster Fullerが考案した,正20面体を同心の球面上に投影したドーム構造(ジオデシック・ドーム)に似ていることから,「Bucky Ball」とも言われてる。ベル研チームは1991年に,カリウムを混合したフラーレンの超伝導性を発見している。

 今回ベル研の研究チームは,フラーレンの分子間にクロロホルムとブロモホルム(クロロホルムに似た化学分子だが,塩素原子でなく臭素原子で構成する)の分子を入れて分子の間隔を広げた。ちょうどクロロホルムとブロモホルムを押し込むことで,フラーレンの結晶を“引き伸ばした”格好である。こうすることで,隣り合うフラーレンの間で,電子や分子が引き合う力を小さくすることができた。繊細な電子デバイス(電界効果トランジスタ)を作り,これを結晶に連結することで,フラーレンの結晶が摂氏-156度で超電導体とになったという。

 この温度と同じ,または高い温度で超電導体になると知られているものに,酸化銅がある。酸化銅はすでに強力な磁石,マイクロ波フィルタ,電力伝送システム用の超電導電線などで商業利用が進んでいる。

 「しかし,酸化銅超電導体の物理的性質は異質であり,まだ解明されていない,また一般的に高価」とベル研は説明する。

 これに対し「フラーレンの超電導体は,従来の超電導体と同じような振る舞いを示すため,その物理的性質がよく理解されている。より低コストで利用できる可能性がある。これにより,エネルギー損失のない有機電子機器や量子コンピュータなどを低価格で実現でき,期待が高まる」(ベル研)。

 「我々の研究で,高温超電導体が酸化銅に限らないことを示した。今後研究をさらに進め,この新素材の超電導性の新たな驚きが発見されることと期待している」(研究チームリーダーのHendrik Schon氏)。

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