米IBMと米Nionは「世界最精度」(両社)の電子顕微鏡を開発した,と米国時間8月8日に発表した。「物質の原子が異なる環境でどのように相互作用するかを確認することができる」(両社)としている。

 同日発行の「Nature」誌は,この新技術を「電子顕微鏡の機能を大幅に拡張するもの」と報じているという。「LSIの極小化が進むなかで,科学者はLSIに使われている材料の構造や特性を細かく調べるための新しいツールを必要としている。今回発表した革新的技術により,電子材料の特性をより徹底的に調査できるようになる」(IBM社Research部門科学者のPhilip Batson氏)

 過去50年間,電子光学機器のエンジニアは,画像のゆがみ“収差”と闘いながら,電子顕微鏡の精度向上に注力してきた。特に大きなぶれ“球面収差”は1枚のレンズでは修正できない。この問題を解決するために,IBM社とNion社の科学者は7枚の磁気レンズと最新のコンピュータを組み合わせて,リアルタイムで収差を矯正する手法を開発した。このようにして,電子顕微鏡は水素原子1個より小さい,わずか0.075ナノメートルの電子ビームを発することができる。

 「これまでの電子顕微鏡は,半導体材料における重要な欠陥の原子構造を調べるには不完全だった。しかし今回発表した技術によって,科学者はこうした欠陥を検出し,必要に応じて修正することも可能だ」(両社)

 例えば,ケイ素(半導体)と酸化ケイ素(絶縁体)の相互作用を調べることにより,ケイ素と酸素がどのように結びつき,絶縁体の特質を決定づけるか解明することができる。絶縁体になんらかの欠陥が生じた場合,環境条件を整えて素材の成長を最適化し,その欠陥を修正できる。

 また,特定の環境における素材の原子の相互作用を理解することによって,半導体の特性を改善することにも役立つ。原子の相互作用や動き方を調べることは素材特性を把握するうえで不可欠だ。環境条件の調整方法がより明確になれば,「将来のLSI部品は自己組織化するようになる」(両社)

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