米IBMが,LSIの回路構成を動的に変更する技術「eFUSE」を米国時間7月30日に発表した。LSI自身が動作状況や障害発生の予兆を監視し,必要に応じて内部の微細な“ヒューズ”で回路を切り替え,処理速度や消費電力を自動調整する。

 たとえば欠陥のある回路を検出すると,LSI内に組み込まれているヒューズが問題のある部分を切り離すなど,障害を未然に防ぐ動作を自律実行する。これらのヒューズは,回路の処理速度を個別に制御することで,LSI全体の消費電力も調整できる。なお,LSIへのヒューズの組み込みは,追加コストなしで行えるという。

 さらにeFUSEは,エンド・ユーザーやソフトウエアの求める処理性能などが変化した場合,それに追従して回路構成を変えられる。回路変更は繰り返し行えるので,LSIが製品に組み込まれて出荷された後でも対応できる。

 「道路の混雑状況に合わせて車線を増減するのと同じように,eFUSEはLSIの回路を組み変える」(IBM社フェローでシステム&技術グループ担当副社長兼主任技術者のBernard Meyerson氏)

 eFUSEを実現するにあたり,同社はエレクトロマイグレーションを利用した。これは,LSI内の金属配線を構成する金属原子が電子との衝突によって移動する現象で,断線の一因である。LSIの性能低下を引き起こすので,これまでは多大なコストをかけて抑制するようにしてきた。同社はエレクトロマイグレーションを制御する技術を確立し,回路のほかの部分に損傷を与えることなく制御可能なヒューズとして利用できるようにした。

 eFUSEはほかの半導体製造技術に対する依存性がなく,新しい素材やツール,製造手法を必要としない。既に同社は,ニューヨーク州イーストフィッシュキルにある半導体工場の300mmおよび200mmウエーハ製造ラインで,同技術を取り入れた製品を量産している。

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