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 応用物理系の科学雑誌「Applied Physics A」は,ナノテクノロジ特集号に,米Hewlett-Packard(HP)が寄稿した分子エレクトロニクス分野の論文約20件を掲載する。HP社が米国時間3月14日に明らかにしたもの。

 HP社上級フェロー兼HP Labs量子科学研究(QSR)グループ・ディレクタのStan Williams氏は,「当社には,現在のシリコン技術を越えて分子サイズ電子工学の世界に進むための,実用的かつ総合的な戦略がある」と述べる。

 「我々は,(1)ナノ・スケールで顕著な量子効果の基礎研究,(2)分子サイズ回路の欠陥を克服する新しいアーキテクチャ,(3)経済的な製造方法という3つのアプローチを試みている。これまでHP Labsはこの3分野を別々に検討していた。Applied Physics Aのナノテクノロジ特集号では,当社の全体的な取り組みを詳しく紹介する」(同氏)

 Applied Physics Aに掲載する論文は,同社が開発した分子サイズのスイッチング回路「crossbar latch」をテーマとする。

 同回路は,信号線として機能する1本のワイヤーと,それに交差する2本の制御線用ワイヤーで構成する。信号線と制御線のあいだは,分子サイズの電気的なスイッチで接続してある。制御線に電圧パルスを加え,極性が反転するようスイッチを操作すると,回路がNOT素子として機能した。回路内の論理レベルを望ましい電圧値に戻すこともできるので,単純なゲートを数多くつなげることで,演算を処理する回路を組み立てられる。

 同社では,「トランジスタに取って代わる基盤技術であり,コンピュータの処理能力を現在の数1000倍に高める可能性がある」としている。さらに,従来のシリコン技術ほどの製造精度は不要で欠陥にも強いので,容易に低コストで製造できるという。

 米メディアの報道(CNET News.com)によると,HP社はcrossbar技術ベースのLSIが2012年ごろ利用可能になると予測しているという。

 さらに同社は,3月25日にHP Labsで国際的なナノテクノロジ・シンポジウムを開催する。Applied Physics A編集長のMichael Stuke氏のほか,世界各地から著名な研究者16人が参加するという。

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