11月5日に公開した「システム開発の原理原則へ戻ろう、それが“SEルネッサンス”」について、読者からの意見に答えるとともに、記事の補足をしたい。

 おかげさまでこの記事はかなり読まれ、当日のIT Proのヒットランキングで上位になった。ただし、記事評価に入力していただいた方の比率を見ると、「参考にならなかった」と答えた方が41パーセントもあった。つまり、「読んではみたものの、内容には不満であった」ということになる。実際、コメントを見ても厳しい意見が多かった。


 この手の記事であれば、タイトルを「社長のワシにも一言言わせて?」とかにしてはどうですか。 内容は、広報宣伝の会社自慢ですよね。

 これは広告記事というやつなのでしょうか?もしそうでないとしたら、記者さんはどこに“記事にする価値”を見出したのか、読んでいて理解できませんでした。

 中小企業の社長さんの自慢話をそのまま聞かされても、はたしてニュースと言えるのか疑問です。どこも出来て当たり前の話を自分のところだけはキチンと出来ているような話は不快でした。


 筆者の意図が読者に伝わっていないのは、書き方がまずかったからであろう。「SEルネッサンス」という強い言葉が見出し(記事の表題のことである)にあったので、読んでみたものの、聞いたこともない会社の社長がなんだか偉そうに自社の技法を語っていた。羊頭狗肉の自慢話である。批判を書かれた方々はこう思われたと拝察する。

 順番にお答えしたい。まずこの記事は、広告記事ではない。広告記事はその企業から広告代をいただいて書くものである。今回は、筆者がこの会社を訪問し、取材をして「記事にする価値」を見出したので記事を書いた。つまり通常の取材記事である。

 なにが価値かというと、記事に書いた通り、「原理原則が重要」ということと、そのための技法を作ったという点である。おっしゃる通り、原理原則については、「どこも出来て当たり前の話」に違いない。ただし、筆者が知る限り、現実にはできている会社や技術者はどこにでもいるとは思えない。

 また、同様の主張をしている方はたくさんある。技法を作った人も何人かおられる。ただし、「技法を習得することがルネッサンスにつながる」という主張は初めて聞いたので、そのことを強調して書いた。

 さらに言うと、筆者がIT Proの一連の記事で主張したいことは実はいつも同じなのである。「インフォメーション・エンジニアリングとプロジェクトマネジメントのスキルを身に付けたシステムズ・エンジニアがもっと活躍して世の中をよくしてほしい」ということに尽きる。それをあの手この手を使って繰り返し書いている。

 今回の記事では、派手な見出しを使って読者を引きつけようという算段をしたことは間違いない。「アルゴ創研がビジネス・モデル創出技法を開発」という見出しにして、技法の説明をし、最後にルネッサンスのことを書いておけば、まったく同じ内容の記事でもこれほど反発を食わなかったかもしれない。ただし筆者は記事を書くときには、一人でも多くの方に読んでもらいたいと思っている。

 さて以下では、残るすべての書き込みに対して返事を書く。


 XPやRUPといった開発手法を適用している開発者の方の意見も交えて、もっと有益な情報を提供して頂きたい。

 改めてこの意見を読むと、「この記事は有益ではない」とおっしゃっているのかもしれない。それはさておき、XPやRUPについても機会があったら記事を書いてみたい。筆者は、新しい方法論や技法にいいところがあればどんどん使えばいいと考える。

 XPについてはかつて日経コンピュータで特集記事を作ったことがある。筆者は取材したわけではなく、記者が書いた記事を査読しただけであるが、一種のプログラマー復権論と思えて、なかなか面白いと思った。もっともあのプラクティスを全部実施することは現実には難しいと思う。

 RUPについては、申し訳ないが、名前しか知らない。よく知らないのに書くと叩かれそうだが、RUPを使うにしても、そもそものビジネスモデルを創出する技法が別に必要であろう。

 もう一つ余計なことを書くと、基幹系のビジネス・システムを作るときに、いわゆる繰り返し開発型の方法論が有効なのかどうかについては疑問に思っている。やはりビジネスモデルとデータ設計は従来通り、ウォーターフォール方式で、がっちりやらないとダメではないのだろうか。このあたりも一度記事を書いて読者の方の知見を伺いたいところである。


 ぜひB-NM、CBDMなどの方法論がどんなものかを教えてください。

 アルゴ創研の中村浩志取締役が一連の方法論の開発者である。関心があれば直接、中村氏へ問い合わせていただければと思う。あ、また広告記事になってしまったか。本ページを公開した後に中村取締役から「B-NMの開発者は中村浩志ではなく朝倉文敏です。質問の窓口は中村です」というメールをいただいた。


 「原理原則へ戻ろう」には同意。▼足元の問題や新しい技術への適応に追われ、アイデンティティを見失っているSEは多いと思う。▼でも、そもそも世の中のSEと呼称される人達のうち、その原理原則を正規に学んだ人はどれほどいるのでしょう?特に業務アプリケーション開発系のSEは、ハードウェアやネットワーク系のSEと違って、何の基礎も無く就職してからOJTで学んだ人が非常に多い様に思います。▼「システムズ・エンジニアが日本を救う」記事の通りエンジニアリング手法が日本を救うと期待する一人として、幅広い層を対象とした基礎教育が必要と思います。

 全く当たり前の話ですが、世の中どうなっているのでしょうか。システム開発やプロジェクトマネジメントの基礎教育が欠けているのではないでしょうか。また、一昔前なら、プログラマーと呼んでいたのを、最近はコンサルタントと呼ぶようですが、名称のバブルもはなはだしいようです。学力低下の傾向は社会にも広まっているようです。


 残念ながら、原理原則の基礎教育が欠落しているという事実はある。ソフト会社の多くは、新人にいきなりJavaかcだけを教え、後は客先に放り込んでいる。以前書いたことであるが、原理原則のさらに基本は小中高校で教えるといいと思う。そうすると顧客のほうも基本が分かっていて話が進む。ワープロやWindowsの使い方など学校で教える必要はない。


 ユーザー企業の担当者からのコメント!書いていることは、ごく当たり前だけど、なかなか、その通りにいかないのが世の中の常。だいたい、ユーザー側は単純に物事を考える上に、修正・変更もワードやエクセルのような感じで簡単にできると思っている。さらに「プロだからすぐにできて当然」と思っているため、タチが悪い。いくら説明しても、わかってもらえないので、私も頭を抱えている。でも、要件が曖昧のままプロジェクトを進めたり、顧客に要件を詰めることの重要性を説明できないSEも悪い。

 おっしゃる通り。これも前に書いたが、自動車を買って「なぜ海を走れない」と怒る人はいないが、システムの場合、土壇場になって「俺は船が欲しかった」という経営者や業務部門がいるので困りものである。たいへんだとは思うが、現場のシステムズ・エンジニアの方が頑張って説明するしかない。微力ながら筆者は記事の発信を通じて側面支援させていただく。


 将にその通りである。顧客がビジネスモデル作りをする手法を知っていることは稀である。これを導くことが出来るのが「本当のSE」である。従って、コンサルテーションに興味が無いSEは、「構築ツール屋」である。この辺りは、ベンダーが勝手に嵩上げ評価して、顧客に価値判断力が無いことに乗じ、何でもSEと呼んで顧客に売込んでいる。「羊頭を掲げて狗肉を売る」ことが罷り通っている。誰とは言わぬが人月単価を推進した業界上部団体の人達の責任は大きい・・。

 もともとコンサルテーションに興味がない人は別にして、多くのエンジニアは基礎教育が不十分な上に、「システムズ・エンジニアとはなにか」といったことすら教わっていない可能性がある。それでも一部の人は現場の仕事を通じて成長し、立派にコンサルテーションができる、原理原則も身に付けたエンジニアに育っている。ただしそれはその人がたまたま育っただけであり、業界として育てたわけではない。人月問題を含め、業界の持病は重い。