本日の前書きはまた過去の前書きの再掲である。ご容赦いただきたい。1年前に何を書いていたかと思い、パソコンのファイルを検索してみた。すると、昨年2月19日に「情報化にまつわる構造問題」について書いていた。

 読み直してみると、1年前に述べていたことと、現在筆者が考えていることとは、まったく同じである。これを一貫性があると見るか、進歩がないと見るかについては意見が分かれるかもしれないが、本人はいつも同じことを書いていて一向に差し支えないと思っている。では1年前の文章を再掲する。論旨と無関係な語句の一部を修整した。

2003年2月19日の前書き

 このところ一つの言葉についてずっと考えている。その言葉は、「情報化にまつわる構造問題」である。筆者はITProや日経ビジネスEXPRESS、BizTechといったWebサイトにあれこれと書いているが、ほとんどが構造問題に属するテーマである。企業あるいは団体が、情報を活用して業務を革新しようとする場合、うまくいかないことが多い。経営トップ、情報の利用者、情報を出すシステムの作り手といった面々がきちんと役割を分担し、情報化を進めることはなかなか難しいからだ。

 難しい理由はいくつかある。情報を使う側(顧客企業)が何をやりたいのか、どうやっていくかを決められない。システムの作り手側(情報システム部門、コンピューター・メーカー、システム開発会社)も、顧客が決めるまでじっと受け身の姿勢で待っていたり、あるいは逆に見切り発車をして物作りを始めてしまう。こうして結局はうまくいかなくなる。

 つまり情報の使い手と情報システムの作り手の間に大きな断層がある、と言えるだろう。断層の側面を細かく見ていくと、共通の言葉がないことによるコミュニケーションのずれ、そもそも何をするかを整理する方法論の欠落、顧客側と開発側のベテラン引退によるスキルの空洞化、開発プロジェクトのマネジメント不足、システム開発の世界における多段階の下請け体制や曖昧な契約の存在などが次々に見えてくる。

 最近、継続して「動かないコンピュータとコンサルタント」問題について書いている。何度もいうが、単純なコンサルタント批判ではなく、構造問題を書いているつもりである。また、日経ビジネスEXPRESSに先日、日本にプロジェクトマネジメントが根付いていないという指摘を書いた。これまた構造問題の一つと言える。

 しかし、構造問題について書くのは難しい。すべての記事に以上のような解説を付け、おもむろに「今回は構造問題のうち、××について書きます」と宣言していれば、記事の趣旨は明確になるものの、読者はかったるく感じるだろう。また書き手としては一人でも多くの方に読んでいただきたいと考える。そこでついつい、「コンサルタント料金はなぜ高い」、「プロジェクトXという題名はいかがなものか」といった記事名を付けてしまう。このため、一部の読者から、「コンサルタントの問題ではないだろう」、「プロジェクトXと関係ない」と怒られた。

 実はこのところ、読者から怒られることが多い。理由の一つは、今述べたような、記事題名と内容の差である。もう一つは、一連の構造問題のテーマが、いずれも眼に見えないものであるからだ。つまり筆者と読者で問題意識を共有しにくい。

 たとえば、今回プロジェクトマネジメントについて書き、何人かの日経ビジネス読者を怒らせてしまった。実は、ITProにおいても同様の体験をした。いずれも、「日本にプロジェクトマネジメントが根付いていない」と書いたことへの反発である。筆者の説明が悪いせいもあるが、怒っている人の書き込みを読むと、そもそもの認識にずれがあるように思える。

2004年2月12日の前書き続き

 読み直してみると、後半は愚痴を書いていてちょっとみっともない。知り合いは誰も認めてくれないが、筆者は案外気が小さいのである。また、筆者の見かけと文章との落差はかなりあるらしく、筆者の書いたものを読んでくれている読者に実際に会うと、「予想していたたたずまいとまったく違いました」としばしば言われる。

 話を構造問題に戻す。1年前に「共通の言葉がないことによるコミュニケーションのずれ」、「そもそも何をするかを整理する方法論の欠落」と書いている。おそらくここがすべての問題の出所であろう。大げさに言うと、ITの問題だけではなく、世の中のすべての問題の原因ではなかろうか。

 近々、この問題を論じた記者の眼を書こうと準備中である。題名は、「ITプロに要求定義は無理」にしようかと思っている。また怒られそうで楽しみである。