新入社員が企業に入ってくる時期である。本日の午後、弊社の新入社員研修で講師を務めることになった。入社20年目にして初めての体験となる。テーマはなんと、「新規事業開発」である。新雑誌の現状を考えるとこのテーマで話をしづらい。だが、少しでも新人に役立つことを言うべく、昨晩あれこれと考えた。

 開発が順調に進んでおれば、新雑誌はとうの昔に完成しているはずで、「この雑誌をこうやって創った」と新人に話せたはずである。しかし現実はそうなっていないので、新雑誌の話は控えようと思っている。

 そこで新人研修担当に相談し、テーマを「新しいことに取り組む」に変えてもらった。筆者がここ数年手がけた「新しいこと」の話をするつもりである。筆者は今でも記者が本業と思っているので、新しいこととは記者以外の活動を指す。例えば、大型調査の起案、書籍の制作、イベントの実施、そしてWebへの取り組みである。ここ2年くらい、記者活動は事実上、お休みし、こうしたことばかりしてきた。色々やってみて分かったことを話そうと思っている。

 「新しいことに取り組む」ために必要なこととして、新人には次の3点を伝えるつもりである。
●日常の仕事をしているとき、「こう変えたらどうか」「こうやったらどうか」と新しいことを必ず考える癖をつける。
●やったことがない仕事の依頼が来たら、どんなに忙しくても断らず引き受ける。勉強になるし、人脈が広がる。
●入社して10年間くらいは、目の前の仕事に没頭し、無理に新しいことをしない。

 3番目は矛盾することを言っているようだが、本業がきちんとできないまま、「新しいことをやりたい」と言っても通らないし、仮にやらせてもらってもうまくいかない。常に「もっといい新しいやり方がある」と考えつつも、既存の仕事にも全力を注ぐという「ANDの能力」がまず求められる。

 せっかくの機会なので、本業の記者活動についても何か言おうと、大昔に書いた「記者マニュアル」を発掘した。これは筆者が日経コンピュータ編集部にいたときに用意したもので、記者の心構えとか、ニュースの取り方とか、原稿の書き方が列挙してある。

 記者マニュアルの第一版を書いたのはおそらく1992年ごろであった。10数年前に書いたものを改めて読むと、なかなか新鮮であった。その中で記者のミッションについて、「ニュースを書くこと」と記している。ニュースはスクープとは限らない。解説記事やインタビューであっても、読者に新鮮な情報を伝達できれば、立派なニュースである。

 マニュアルの中には、常にニュースは何かを考えること、といった趣旨の文もあった。つまり、本業でも新規事業でも、基本姿勢は同じということである。