インターネットが既存メディアに与える打撃について話を続ける。既存メディアといった場合,テレビやラジオ放送,新聞,そして雑誌が含まれる。しかし筆者は,テレビやラジオのことがよく分からないので,もっぱら紙のメディアとインターネットの対比を考えてみる。

 先日,ある若手経営者からメールをもらった。まずそのメールを紹介する。

「実は私もこの点は気にしています。一番影響を受けているのは、新聞記事だと思います。例えば、今日の午前中にプレス発表があったとします。新聞はリリースに基づいて記事を書き始めますから、記事が掲載されるのは明日の朝の新聞になります」

「しかし、プレスリリースが出た段階から、一般市民がブログで議論を開始します。夜には、その内容について、かなり議論が進んでいることが多々あります。そして翌日の朝、新聞を見ると、前日の昼ごろに書かれた、まだ議論も推敲も不十分な記事が載っています。この新聞、何かいているんだ,という感じです」

「うがった視点かもしれませんが、最近新聞に載っている記事が、本当にうすっぺらくなった気がします。元々そうだ、という話もありますが」

 正確に言うと,一部の新聞には,プレスリリースより少し先に記事が出る。朝刊一面に大きな記事が出て,「これはなんだ」と思っていると,その記事と同じ内容のニュースリリースが昼頃配信されたりする。これはすなわち,発表した企業が事前に新聞社にご説明をした,ということである。

 しかし多少早くても,基本はプレスリリースに基づいているので,深みのある記事はなかなか書けない。この若手経営者が言うように,「一般市民がしっかりした議論をする」のであると,既存メディアの存在価値は下がってしまう。「速報性はインターネット,深みのある記事は紙」という構図が崩れるからだ。