キャリアパスという言葉がある。ソフト技術者あるいは情報システム部員のキャリアパスはどうあるべきか、といったテーマはITの世界でよく取りざたされる。

 そこで議論されるのは、専門職か管理職かということである。自分の技術を磨き続け、専門家としてやっていく。あるいはマネジメントの力を付け、部下を抱える部課長になっていく。ある程度の年齢になるとこうした選択を迫られる。

 ところで管理職と書くと、部下の点呼をとったり、日常活動まで口を出すという悪しき印象を与えかねない。以下ではマネジャと書く。

 さて専門職とマネジャをまったく別の職種としてとらえてしまうと、それぞれの仕事に必要なスキルまでまったく異なるという誤解が生じる。いささか乱暴な物言いであるが、専門職でもマネジャでも求められるスキルにはそれほど極端な差はないと思う。

 専門職といえども自己をマネジメントする力や交渉力が欠かせないし、マネジャも専門職と話ができる程度の専門知識は必要だ。実際、筆者が存じ上げている「仕事ができる専門家」は皆、自分の仕事内容を的確に説明できるし、コミュニケーション能力は非常に高い。20年近く記者の仕事をしているが、いわゆる「神経質な専門家」にはほとんど会ったことがない。

 逆に「ゼネラルマネジャ」と名刺に刷ってある方でも、担当する仕事について細かいことまで知っていることが多い。ある敏腕プロジェクトマネジャは「今でもプログラミングやテストはこなせる。時間ができたときには現場に行ってプログラミングを手伝っている」と語っていた。ただし日本企業の経営トップは、いいかどうかは別にして細かいことはあまりご存じない。

 ここから本欄において毎度の話になる。記者や編集者はどうかと言う問題である。記者はたった一人でする仕事であり、専門職であるはずだ。編集長や発行人になるとこれはマネジャであろう。筆者は強く希望したわけではないが結果として、専門職の道を歩んでいる。

 最近、本欄の愛読者の一人に会う機会に恵まれた。その人と実際に会うのは初めてであった。彼女は20歳代というがご自身のキャリア計画をしっかり立てている。「将来こうしたいので今こうしています」とはっきり言われ、筆者は圧倒されてしまった。

 筆者は直近の締切に合わせて全力を挙げることはできる。だが1年先の計画となるとなかなか立てられないし、キャリアパスに至っては計画が無いに等しい。正確に言うと2年ほど前に先々のことを考え込んだことがあったものの、その通りに物事を進めなかったので、やはり無計画のままである。