本日は東京工業大学(材料科学)が開いた「スーパードクター育成への挑戦」というフォーラムに参加した。スーパードクターとは、専門分野で博士号を持ち、なおかつビジネスもできる人材のことである。

 フォーラムでは、企業経営者、研究機関の方、大学関係者、コンサルタント、企業人、学生、来場者といった人たちが次々に発言した。発言を希望する人が多すぎ、予定の終了時刻を40分あまり過ぎてもまだ議論が続いた。なかなか珍しいことである。

 実際、フォーラムの内容はかなり濃いもので、色々な示唆を受けた。ここでは一つだけ書く。

 経営と技術の融合といったテーマを考える場合、おおざっぱに言って二つのやり方がある。一つは「経営者に技術を理解させる」、もう一つは「技術者に経営を理解させる」というものだ。

 二つのやり方の是非を問うていくと、「経営者が技術を理解するのは困難」「技術者や研究者の本分は研究開発にあり経営者になるわけではない。だからビジネススクールのような教育をしてもどれほどの効果があるのか」といった反対意見が出て、訳が分からなくなる。

 本日、大学院生にビジネスを教えている客員教授の方がこう言っていた。「技術者や研究者に対し、経営知識を身に付けましょう、と言っているわけではない。そうではなく、経営者のつもりになって事業計画を立てたり、資金繰りをしてみましょう、と説明している」。

 つまり技術者であることをいったん忘れてもらい、経営者の疑似体験をしてもらおうというわけだ。その狙いは、「技術者や研究者の視野と将来の選択肢を広げる」ことにある。

 この説明ならよく分かる。その教育を受けた技術者あるいは研究者が、専門家の道を進むか、経営者やマネジャーの道に進むかは、本人の意思に任される。どちらの道を選ぶにしても、「経営者」の疑似体験をしておいて損はないはずだ。

 逆に言うと、経営者あるいはマネジャーが技術者や研究者の疑似体験をしておくことも有益だろう。理系文系を問わず、新入社員を必ず研究開発や技術の職場に配属する。こんな大胆な人事をする企業はないだろうか。