日経ビズテック第3号の編集作業が昨晩終了した。第3号は9月8日から発売される予定である。

 日経ビズテックの第1号と第2号をご覧になったあるコンサルタントの方から「こういうものが売れるのかどうか、よく分かりませんが、破天荒というかバランスをとることをあえて拒否しているというか、通常では成立しないはずのものがここにある、という存在感はとにかくありますね」と言われた。やや分かりにくい言い方だが、誉められたと思っている。

 バランスがとれていない例としてそのコンサルタントは「技術経営という面倒なテーマを取り上げているにもかかわらず、分かりやすく説明した入門記事が載っているわけではないし、かといって固い論文集とも違う。とにかく読み切れないくらいのボリュームがある。デザインは某誌に非常に似ている点を除けば、とてもよい。ただしすごくお金がかなりかかっているようであり、ボリュームと考え合わせると、事業採算を計算して作っているのかどうか疑問」と指摘した。

 確かに通常のものとは違う出来映えにはなっている。昨日第3号の編集を終えて痛感したのは、作り方も弊社の既存雑誌とは相当違うということだ。

 日経ビズテックの編集にあたっては、掲載しようとするおおまかなテーマを決めておくが、実際にどんな記事をどのようなスタイルで掲載するかはぎりぎりまで決めない。というか仕事がなかなか進まないので、なかなか決められないのである。いったん決めても、その後、面白そうな原稿がもらえそうになると、そちらを優先して全体の構成を組み直している。

 掲載する記事や論文のスタイルも多種多様である。第3号にはテクノロジーマネジメント、サムソンの企業研究、ブランド論と三つの特集を掲載する。校正紙になった各特集を見比べるてみると、これらがすべて同じ雑誌に載るものだろうか、というくらいデザインや文の調子が違う。事情を知らない人が編集部をのぞいたら、三つの雑誌を同時に作っていると誤解するだろう。

 こうしたバラバラの原稿を束ねた236ページの本を2週間足らずで一気に編集し制作している。編集部の人数は8人であり、通常の雑誌より少ない。このため誰が記者(原稿を書く人)で誰がデスク(原稿を査読する人)であるか、よく分からない混沌とした状態で記事作成と査読が行われる。さらに文字の確認と統一のため、校閲の専門家に頼んでいるが、彼女一人で200数10ページを読まないといけない。今回は原稿が出来上がるのが今までにもまして遅かったため、大量の校正紙を持ち帰って読んでもらった。

 査読が終わった原稿を実際の誌面にすることを制作という。こちらも通常の体制では期限通りに作れない。制作部門のリーダーの人がそのとき手がすいている担当者に仕事を割り振って、200ページ超のボリュームの制作作業をこなしていく。

 デザイン会社のほうも土日返上でフル回転してもらった。日経ビズテックはイラストを多用する。ところが土壇場になってページ数を変更し「イラストをもう一点追加してほしい」などど無理をデザイン会社にいうことがしばしばある。

 これに対し、通常の雑誌は特集、ニュース、事例、インタビューといったように、雑誌の枠組みがかなり決まっており、その枠組みの中で記事のテーマを考える。そして記者が取材をして記事を書き、その記事をデスクが査読するという流れの中で雑誌が作られる。もちろんすべてが整然と作られていくわけではないが、日経ビズテックの混沌状態に比べれば、きちんとしたルーチンが確立している。

 正直言って、第1号を作ったときは「これでは予定通り発売できないのではないか」と途中で思った。締切までにとてもこなせない量の原稿が溜まってしまったからだ。しかし第1号は完成した。第2号の編集過程では「これは1号目よりひどい状態だ」と心配したが、これまた期限通りに出来上がった。今回の第3号はまた同様の状態になり「今度こそ本当に危ない」と気をもんだが、それでも間に合った。

 冒頭に紹介したコンサルタントの人に「20年くらい雑誌の仕事をしていますが、これまで仕事の締切に絶対間に合わない、と思ったことは実はありません。しかし日経ビズテックは1号目も2号目も本当に綱渡りでした」と言ったところ、こういう反応が返ってきた。

 「なるほど、確かに混沌から生まれてきたという感じはしますね。普通マネジメントをするというとバランスをとっていくのですが、日経ビズテックはアンバランスなマネジメントがされているのでしょう。作るほうは大変でしょうが、こぢんまりとした雑誌になってはつまらないので、気力体力が続く限り、今の混沌路線で行って下さい」。

 混沌から生まれた第3号をぜひご覧になっていただきたい。