モデリング手法に関連したことを数回書いたところ、読者からメールをいただいた。そこには「誰に何を理解・把握してもらうために作成するドキュメントなのか、その目的ためには何が最適か、だけが重要です。どのような手法を採用したらよいかといった具合に、手法から考え始めるとおかしなことになります」とあった。

 この読者のメールを以下に紹介する。

 「UMLについて、また最近いろいろ書かれていますが、実際に採用した経験がある私の個人的な意見は、手法に囚われすぎていて実務にはあまり使えないなあ、というものです。

 UMLでもDOAでも記載方法や意味がわからないと、作成されたドキュメントを見ても内容は把握できません。ということは、手法の素人には理解不能だということです。素人でも視覚的に把握できるように、関連図を作成したりフローチャートを作成したり、内容に応じて試行錯誤しています。

 ちなみに私が今てがけている基幹系システムの再構築にあたっては、素人であるユーザーに参加してもらう形でプロジェクトを進めているため、業務フローチャートの作成から始めています。事業全体の業務の流れを把握してもらって、ユーザーに全体最適化を促すことはとても重要です。

 道のりは長いですが早道はないので、実業務担当者へのヒアリングと並行して進めています。その場合、相手の立場に応じて説明の仕方を変え、ユーザーがうまく答えを出せるように誘導しています」。

 さらに昨日は、別な読者からファクシミリを使って手紙が送られてきた。この読者はインターネットを使っておらず、いつも意見をファクシミリで送ってくる。携帯電話を使わない筆者と同様、かなりの頑固者とお見受けしているが、意見や指摘は的確なのでありがたく読んでいる。送りつけられた手紙にはこう書いてあった。

 「物事の基本を徹底することは大事。ただし基本を分かりやすいマニュアルにしてしまうと、それを勉強しただけで何かができると錯覚する。最近の貴社の報道は、マニュアル、しかも海外製のマニュアルが素晴らしいから勉強しろというものばかり。猛省を促す」。

 この読者は電子メールも使っていない。そこで早速電話をした。同氏はこう言った。

 「マニュアルを否定するものではない。基本が秘伝になってしまい、師匠や先輩について長期間修行しないと身につかないというようでは困る。基本を汎用的な形にする努力をする一方、基本に安易な名前をつけて流布するという愚を避ける。こうした舵取りが必要ではないか」。

 体系化は必要である。手法、方法論、知識体系、ツールはうまく使えば役に立つ。しかしUMLだ、ODAだ、PMBOKだ、ITILだ、というように、体系を喧伝しすぎると、手段であるはずの体系を習得することが目的になってしまう。

 PMBOKについては最近あるコンサルタントから「IT業界におけるPMBOKブームの戦犯は谷島さんですよ」と言われた。「PMBOKの上で知識を整理していくと便利」とは書いたが「PMBOKを学べばプロジェクトをうまくマネジメントできる」と書いた覚えはない。しかしこのコンサルタントの言いたいことは分かる。

 ファクシミリで手紙を送ってきた読者がいう通り、「体系化する」しかし「体系を盲信しない」といった、相反する取り組みが必要にある。つまり矛盾する事柄を同時追求する、「AND」の姿勢が欠かせない。ANDについては以前数回、「ANDの必要性」と題して書いた。