IT産業においては事業提携や合弁会社の設立が頻繁に行われる。他の産業に比べ桁違いに多いのではないだろうか。数が多いとはいえ、大手IT企業同士の握手となると、それだけで新聞や雑誌には大きな記事が掲載される。ただし鳴り物入りの提携がどうなったかについては報道されないことが多い。

 知り合いから原稿を頼まれたため、昨日の休みを利用して書きあげた。執筆中に「大手IT企業同士の握手その後」という企画を思いついた。その原稿の主題が「IT産業における新事業の創出」であったからである。早速、数年前に話題になった新会社を数社思い出し、インターネットの検索エンジンを使って調べてみた。インターネットは偉大であり、5分程度で失敗事例を数件見つけることができた。

 一つは半導体大手と業務ソフトウエア大手が共同出資して作ったアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)である。自分でニュースを書いたからそのASPのことを覚えていたが、その後どうなったかまでは知らなかった。調べてみると設立から3年後に「利益が出る見通しがたたない」と発表し、事業を停止していた。ただし日本語のメディアはこのことを報じていない。

 ちなみに筆者がニュースを書いたときにASPという言葉はまだなかったはずである。正式発表前に書いたこともあって、要するに何の会社であるかなかなか理解できなかったことを思い出した。ASPという文字も最近見ることは少なくなった。

 もう一つはコンピューター大手と基本ソフトウエア大手が共同出資して作ったインテグレータである。筆者が日経コンピュータ編集部に在籍していたときに、若手記者がこの件について記事を書き、原稿を筆者が査読したので覚えていた。この新会社も数年で解散していた。解散に関して新聞には数行の記事が載った。設立時に報道と比べると文字数は10分の1程度であった。日経コンピュータは特に報じなかったと思う。

 昔の話を掘り出して何の意味があると問われれば、事業モデルの事例として意味があると答えたい。新会社を作った以上、それなりの計画があったはずである。どこで計画と現実がずれたのかを検証することは有意義だと考える。