「私が嫌いなのはデモです」。こう書き出された電子メールを知り合いから頂戴した。ユーザー企業で情報システムを担当している方である。ここでデモとは、IT関連企業がユーザー企業に対して実施する、製品のデモンストレーションを指している。

 メールはこう続いた。

 IT企業にはいつもはっきり申し上げています。「製品売り込みのために都合よく構築されたデモ環境で稼働状況を見せられても、採用できる技術かどうか判断できません」。IT企業にもユーザー企業にも、IT関連の「悪しき慣習」があります。それらを打ち破って、社内の利用部門にあれこれ説明することにいささか辟易しています。

 筆者はこう返信した。「悪しき慣習を五つ挙げて総攻撃する記事を書きましょうか」

 すぐ返事が来た。「ぜひお願いします。ITProの記者の眼で取り上げると、賛否両論おもしろい意見が飛び交うと思います」。

 早速五つを何にするか考え出したがなかなか難しい。一つはやはりソフトウエア開発の「多段階発注」であろうか。このところ不祥事を起こした大阪のソフト会社が連日のように新聞の社会面をにぎわせている。株式公開の前から、複数のIT企業間で伝票を回し、実態のない売り上げを計上していたという話である。同社は監査法人に対して「IT業界ではこういう取引慣習がある」と説明していた。

 二番目は「品質保証の無さ」。契約は請負なのに実質的な作業形態は要員派遣であり、その結果として成果物の品質にIT企業側がほとんど責任をとらない。以下思いつきで列挙すると「契約なしで仕事を始める」「納品してから仕様が固まる」「発注者が発注内容を受注者にまとめさせる」などであろうか。最後の三つは同じ話のようにも思える。

 まだ重大な「慣習」があるように思う。引き続き考えたい。