PR

 昨晩帰宅途中、某夕刊紙を購入した。駅の売店に「システム統合対立」と大きく刷った紙が貼り出されているのが目にとまったからだ。「どうせたいしたことが書いてあるわけではあるまい」と思ったものの結局買ってしまった。

 誌面を眺めてみると、青色発光ダイオード発明者の写真が一面にカラーで印刷されている。その記事は「日本のサラリーマンの処遇を問う」と語ってきた発明者の主張を全面的に支持するものであった。大手新聞が企業とサラリーマンの両方に配慮するか、「発明者はたった6億円と言っています」などと書いて発明者を揶揄していたのに比べると、夕刊紙の主張はよくも悪くも明解と言えた。

 さて大手銀行同士のシステム統合に関する記事は第3面にあった。ひときわ目立つ真っ赤な文字で「システム統合でツッパリ合い」とあり、その脇に「合併に暗雲」という文字が黒字に白抜きで書かれている。筆者は昨年末まで情報システムに関する取材をほとんどしていなかったので、この記事を論評することは差し控える。青色発光ダイオードを巡る裁判に関してはかなり勉強したので色々と書けるのであるが「情識」とは異なる話になってしまう。

 今回書きたかったのは、金融機関のシステム統合の動向が夕刊紙の目玉記事になっていることについてである。10年くらい前であれば、システム統合の記事が夕刊紙に載ることなどあり得なかった。ところが今や、発行元は宣伝のための紙をわざわざ別刷りし、システム統合の記事で部数を伸ばそうとしている。金融機関の関係者に加え、IT産業の関係者が関心を持って買う、と発行元は判断しているのだろう。まさに隔世の感がある。

 「統合方針が固まってもいないのに面白おかしく取り上げるのはけしからん」と怒る人がいるかもしれない。確かに当事者の多くは迷惑しているに違いない。しかし筆者は情報システムに関しては「無視されるより記事になったほうがよい」と考える。情報システムを巡る問題を引き起こす原因の一つは、多くの人がシステムに関心を持たないことにあるからだ。当事者の方には済まないが、たとえ扇情的な記事であったとしても大きく取り上げられる自体は悪くない。

 ただし記事を書いている人が「システム統合」とは何かを理解しているかどうかとなるとはなはだ心許ない。これは夕刊紙だからではなく大手新聞であっても同様である。IT関係の方々は「新聞や雑誌記者の勉強不足」をお叱りになる。勉強不足はその通りである。その上で言うのであるが、情報システムというものが世間一般で理解されていないことにも問題がある。

 数年前、ある学会に呼ばれ、システム統合について話す機会があった。質疑応答をして分かったのは学会に出てこられるような方々でも「情報システムの統合とは何をするのか」についてはご存じない、ということであった。もう少し詳しく書くと「オンラインシステムのデータベース一本化」が理解できない。いや、理解できないのではなく、それが何かを知らないのである。

 情報システムの仕事に従事するプロフェッショナルの力量を図る試験問題を一つ考えてみた。

「企業情報システムの統合とは何か、統合にはどのような作業が必要なのか、成功させるための注意点は何か。これら三点について経営者が理解できるように簡潔に説明せよ」。