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 昨晩11時半ごろまで新宿西口近くの飲食店にいて、ある人と「IT歴史書」の重要性について議論していた。30年くらい前、いや10数年前であっても、ITについての正確な記録がほとんど残っていない、それは問題ではないか、といったことを延々と話した。

 なぜ歴史書がないと困るか。若いエンジニアの人が過去から学ぶことが難しくなるからである。コンピュータそのものの技術は目覚しく進歩しているが、本欄で執拗に書いているように、人間のやること、人間が思いつくことはほとんど進歩しない。過去の歴史を紐解けば必ず類似の事例を見つけ出せる。それだけで失敗が減るとは言わないが、防止策の一つにはなる。

 ところが現状では過去の歴史を概観する簡便な手段がない。コンピュータの歴史を書いた本はいくつかあるものの、コンピュータを使ったユーザー企業の創意工夫と苦労も合わせて記述した本となると案外少ない。

 酒が入った席であったので、それなら我々で歴史書を出版しよう、と盛り上がった。筆者はまだ禁酒中なので烏龍茶を飲んでいたが、飲食店にこもって長時間話していると場の雰囲気に酔うのである。しかしどんな内容の本にするか、何を取り上げるかについて話し出したとたんに行き詰った。大変な手間がかかることが分かったからだ。

 30年前の出来事について正確に書くためには当事者にあって事実確認をしなければならない。当事者を探し出し、確認の取材をするとなると相当な時間がかかる。物故されている方もおられよう。「面倒だから誰もやらないのかもしれませんね」「確かに」という、はなはだ情けないやり取りをして飲み会はお開きになってしまった。

 今朝になってIT歴史書のことを考え直し、二つの方法を思いついた。一つは乱暴であるが、過去の日経コンピュータに報道された内容の中から歴史的に重要なものを選び出し、それぞれの話題について歴史的評価を付け加え、まとめるというものである。弊社で出している雑誌であるから、執筆者を探し出すことは比較的簡単であるし、重要な出来事はおおむね掲載されている。

 もう一つは大掛かりになるが「日本IT史における10大ニュース」を選ぶ読者投票を実施する手がある。投票はインターネット、すなわちITProを使えばよいだろう。こうして選んだ10大ニュースを発表し、さらにそれぞれについてITPro読者から「そのニュースに私はこう接した」「私はこう取り組んだ」といった意見や経験談を寄せていただく。これらをまとめ上げれば、数多くの方々の証言付きの歴史書が出来上がる。

 寝不足で頭がはっきりしていないせいか、どちらもいいアイデアのような気がしてきた。日経コンピュータ編集長に早速提案してみることにする。