マイクロソフトの次世代コンピューティング構想「.NET」に,翳りが見え始めた。.NETが目指す世界では,Webサービス技術を利用して各社がさまざまなサービスを実現する。その部品として利用できる基本サービス「.NET My Services」を提供することが,同社の構想の一環だった。ところが.NET My Servicesは,既に提供済みの認証サービス「.NET Passport」と,2003年3月19日に開始したプッシュ配信代行サービス「.NET Alerts」の二つで打ち止めとなる可能性が高いことが明らかとなったのだ。

 Microsoftが「.NET My Services」の提供計画を発表した2001年10月の時点では,.NET Alertsのほかにスケジュール管理の「.NET Calendar」やアドレス情報管理の「.NET Contacts」などのサービスをWebサービスとして提供する予定だった。もともと.NET My Servicesは,.NETアプリケーションの基本となるサービスを同社自らが提供することで,.NET構想の実現を後押しするのが目的だったからだ。

 しかし「.NET My Servicesの拡充によって,同社に個人情報が集中する」という懸念の声が高まったため,ユーザーの認証とコンテンツへの誘導を担当する「入り口の部分」(マイクロソフト デベロッパーマーケティング本部長の安藤浩二氏)だけの提供にとどめる方針に転換した。このためMicrosoftは,.NET Alertsに続く.NET My Servicesの有償サービスの提供を予定していない。「残りはユーザー企業が自社システムに組み込めるソフトとして提供する方針に変えている」(安藤氏)という。

 なお.NET Alertsは,MSN/Windows Messengerによるデスクトップ画面へのポップアップ・ウインドウ表示またはメールを通じたメッセージ配信を有償で代行するサービス。同日,JTBが旅行情報の告知を,東京三菱銀行が為替市況の通知を.NET Alertsを使って配信すると発表した。ユーザー企業は認証サービス「.NET Passport」の年間利用費138万円と,1ユーザー当たり月額9円の利用費(標準的な利用方法の場合)を支払う。

(高橋 秀和=日経バイト)

マイクロソフト