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 2003年6月11日(米国時間),米サンフランシスコで開催中のJava開発者向け会議「2003 JavaOne Conference」で,米Sun Microsystems社は新たな開発ツールを披露した。「Project Rave」という名付けられたこのツールは,JavaによるWebアプリケーションの開発を容易にする。ドラッグ・アンド・ドロップでWebページを作成できるもので,JavaによるWebアプリケーションの開発スタイルを大きく変える可能性がある。

 Project Raveは,同日の基調講演でSunのRichard L. Green副社長が紹介した。Project Raveの目的を示すために,Green氏はまず開発者の分類を始めた。コーディングを要求される量,開発作業の複雑さ,という二つのパラメータを持ち出し,この二つを使って開発者を4種類に分類できると説明した。(1)Technologist,(2)Enterprise Architect,(3)Integrator,(4)Corporate Developer,である。(1)は,コーディングを多く要求されるがそれほど複雑な作業ではない人,(2)はコーディングを要求され,かつ複雑な作業を抱える人,(3)はコーディングはそれほど要求されないが,作業は複雑な人,そして最後の(4)が,コーディング量も少なく,複雑な作業も求められない人,である。Project Raveが有効なのは,これらのうち(4)に当てはまる開発者である。逆に言えば,今までのJava開発ツールはここにスポットを当てたものがなかった。

 具体的には,ドラッグ・アンド・ドロップによるWebアプリケーションの開発を可能にする。ボタンやテキスト・ボックスなど,Webアプリケーションに使われるユーザー・インタフェースがコンポーネントとして並んでおり,ユーザーはマウスを使って望みのものをWebページに貼り付ければよい。ユーザー・インタフェースだけでなく,データベース・アクセスなどの機能をコンポーネント化している。データベースの項目は,マウス操作だけでWebページに表示させるテーブルのセルなどにマッピングできる。セル内には,データベースに格納されている値が動的に挿入される。Javaのコードをいっさい書かなくても,このようなWebアプリケーションを作れるのである。言ってしまえば,Visual BasicのスタイルでWebアプリケーション開発が可能になる。

 Project Raveは,現在JCP(Java Community Process)によって仕様策定が進んでいるJavaServer Faces(JSF)というフレームワークをベースに開発されている。JSFは,ユーザー・インタフェースをコンポーネント化し,それを組み合わせてWebアプリケーションを開発するための技術だ。コンポーネント化することで部品の使い回しができるし,Webページにマウスで貼り付けることも容易になる。イベント・ドリブン型のプログラミング・モデルを採用していて,部品に加えられたユーザーの操作をイベントとし,それを受け取ってロジックが実行される仕組みである。クライアント・アプリケーションでは一般的なモデルだ。JSFを利用すれば,Webアプリケーションをこれと同じ方法で開発できるようになる。両者の間でロジック部分を共有させたい場合に便利である。

 Sunは,「Sun One Studio」というJavaの統合開発環境を既に持っている。これとの棲み分けをどうするかについては,基調講演では語られなかった。しかし同社の開発ツール担当Senior Product ManagerであるDan Roberts氏によれば,「Sun One Studioは残り続ける。Project Raveとは共存していく」という。この二つのツールは,ターゲットとしているユーザー層が違うためだ。Sun One Studioは,Javaのプラットフォームをよく理解している人向けのツールで,コンポーネントを一から作り上げていくような高度なスキルを持つ開発者が使う。一方のProject Raveは,Javaに関する知識がそれほど深くない開発者向けのツールであるという。既に用意されているコンポーネントをドラッグ・アンド・ドロップで貼り付けながら,アプリケーションを開発する。このためSun One Studioよりも,さらにわかりやすい見た目が要求される。どちらのツールも,NetBeans.orgによって開発されたオープンソースの統合開発環境をベースに作られているが,「Project Raveは見た目を完全に変えた」(Roberts氏)。

 Project Raveは現在のところ,JCPによって公開されているJSFのReference Implementationを利用して開発されている。2003年の秋にはベータ版が公開される予定である。ここでさまざまな開発者に試用してもらった結果を反映して,「2004年中には正式リリースができるのではないか」(Roberts氏)という。価格や製品構成は未定だが,同種の他のツールと十分競合できる価格になる見込みである。オープンソースとして公開したり,無償版を提供する予定はない。

 Project Raveには,第2,第3のバージョンのリリース予定も立てられている。第1段階ではWebアプリケーションをターゲットとするが,第2段階ではリッチ・クライアントの開発もできるようになる。第3段階には,すべてのJ2EEの機能をサポートするという。

(八木 玲子=日経バイト)