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 シスコシステムズは2004年6月29日,プロバイダなどの通信事業者向けルーティング・システム「Cisco CRS-1」を発表した。1台では1.2Tビット/秒の処理が可能で,40Gビット/秒の転送処理をするラインカード用スロットを16個備える。最大72台まで接続でき,全体で92Tビット/秒の処理能力を実現する。Cisco CRS-1の特徴は三つある。(1)システムの常時稼働を目指してアーキテクチャおよびルーターOS「IOS XR」を新たに開発したこと,(2)専用のProgramable ASICによって機能拡張性を向上させたこと,(3)ライフサイクルをこれまでの3~5年から10年以上に延ばしたこと──である。

 新ルーターOSであるIOS XRは,カーネル部分に各種のコンポーネントを追加して動作するモジュラー構造を採用した。従来のルーターOSであるIOSは,カーネル部分と他のプロセス部分が一体であるモノリシックな構造であったため,バージョンアップの際には再起動が必要となり,システムを止めなければならなかった。IOS XRはプロトコルや機能を追加するときは,そのコンポーネントを単独でインストールすればよいのでサービスを止めなくてもよい。また,あるプロセスに異常が生じた場合はそのプロセスだけを再起動できる。

 機能拡張の柔軟性を高めるために,米IBM社と共同で専用のProgramable ASICも開発した。これまでは,アクセスリストやQoSなどの特定機能向けにASICを活用していたが,Programable ASICは必要な機能を随時書き込めるので汎用的な新機能追加の場面で役立てることができる。例えば,Cisco CRS-1をエッジ用として使う場合は,エッジ用の機能を書き込める。

 高速化のためにパケットのスイッチング方式も一新した。同社の大規模ルーターであるGSR(Gigabit Switch Router)は,複数の入力ポートと出力ポート間の配線を格子状にして交点を切り替えて出力先を選ぶ「クロスバ・スイッチ」を採用していた。このクロスバ・スイッチは入力ポートと出力ポートの数を増やす場面において,拡張性に乏しかった。そこで,入力と出力の間に1ステージ挟んでスイッチングを3段階(3ステージ)にすることで,入力ポートと出力ポートを備えるモジュールを追加できるようにした。この仕組みがあるので,多数の入出力モジュールを組み合わせても,全体としては一つのルーティング・システムとしてパケット転送できるようになった。

   なおIOS XRはCisco CRS-1専用であり,他の同社製ルーター/スイッチでは動作しない。既存のIOSと統合するような計画もない。ただし同社はIOSの構造を見直す作業を進めている。IOSのモジュラー構造化を実現するために,IOSをマイクロカーネルの上で動く一つのコンポーネントとして再構成する考えだ。モジュラー構造にできれば,セキュリティ・ホールが見つかった場合でもこれまでのように修整したIOSをインストールして再起動する必要がなくなるので,システムを止めずにパッチをあてて運用できるようになる。

(堀内 かほり=日経バイト)