三和電気工業は今年8月、最大100Mビット/秒のインターネット接続サービス「Bフレッツ」を使って、安価で高速な拠点間ネットワークを構築した。月額38万円という少ない通信コストながら、インターネットVPNを自ら構築することで、社内の業務を大幅に改善することに成功した。新しいネットワークを使って、VoIPによる内線電話網の刷新や、離れた拠点間で大容量のCADデータを共有する取り組みなども併せて行っている。

 「企業規模に合ったネットワーク構築を心がけたことが成功の要因」。こう語るのは、通信機器用コネクタ・メーカーの三和電気工業で新ネットワーク構築を担当した尾崎裕一氏だ。東京都中野区に本社を置く同社は、国内に五つの拠点を持つ年商100億円規模の中堅企業。今年8月から、主要4拠点を結ぶ新ネットワークの運用を開始した(図1[拡大表示])。

 三和電気工業はインターネットVPNを使って新ネットワークを構築した。各拠点に通信の暗号化やアクセス制御を行うVPNゲートウエイを導入。インターネット接続サービスには、NTT東日本の光ファイバを使った常時接続サービス「Bフレッツ」を採用した。

図1●三和電気工業の新ネットワーク。NTT東日本のBフレッツを使ってインターネットVPNを構築することで、日常業務を改善できた。また、この高速回線とNASを利用して、離れた拠点間でCADデータを共有している。地方や海外の拠点からは、VPNソフトをインストールしたパソコンを使ってインターネットVPNに接続できる

帳票データの取り込みに半日も

 三和電気工業が拠点間ネットワークの刷新を考え始めたのは昨年の秋。きっかけは、従来のオフコンを使った基幹システムを、Windows NTサーバーとERPパッケージ(統合業務パッケージ)を中心としたシステムに変更したことである。新システムは業務改善の目玉になるはずだった。ところが実際は、「数十枚程度の請求書を印刷するために、八王子工場のサーバーにあるデータを中野本社のクライアントに読み込むだけで半日もかかった」(尾崎氏)。

 業務に支障を来さないようにするには、ネットワークの高速化が急務となった。旧ネットワークは各拠点間を専用線で結んでおり、通信速度は64k~384kビット/秒だった。加えて、中野本社以外の3拠点では、専用線を使った内線電話網を構築していたため、新ネットワークには内線電話網を維持・拡充するという条件もついた。

 三和電気工業の尾崎氏は、「今“はやり”のIP-VPNや広域イーサネット(広域LAN)の導入、さらには既存の専用線の高速化までも対象に比較・検討した」と語る。その結果、これらの通信サービスは自社の企業規模に対してコストが高すぎると判断。インターネットVPNを導入するに至った。インターネットVPNのランニング・コストは、IP-VPNや広域イーサネットに比べて半分くらいになる計算だったという。「当社の業務では、高いコストをかけてまで通信に過度の信頼性を確保する必要はない。それよりも業務の改善を最優先に考えた」(尾崎氏)。

 新ネットワークでは、Bフレッツやインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)のOCNに支払う費用は月々38万円。専用線を使った旧ネットワークの約60%である。にもかかわらず、新ネットワークの通信速度は旧ネットワークの500倍以上、「実効速度で比べても80倍以上」(尾崎氏)に高まった。Bフレッツには最大10Mビット/秒のサービスと同100Mビット/秒のサービスがあるが、三和電気工業ではすべての拠点に最大100Mビット/秒のサービスを採用している。

 内線電話網については、各拠点にVoIPの機能を備えたルーターを設置し、インターネットVPNを通るIP電話網を構築することで落ち着いた。

鈴木 孝知




 広域イーサネットやIP-VPNを選ぶことが、優れた企業ネットワークの条件ではありません。企業の業務に合ったネットワークを選ぶことが大切です。

 もちろん、“コストが安い”ことが業務に合ったネットワークの条件というわけでもありません。三和電気工業の場合、多少ネットワークが使えない時間があっても、それほど支障がでない業務やシステムに、ネットワークを使っているからインターネットVPNを選択できたのです。実際、同社がインターネットVPNを導入した後、ネットワークが使えなくなったことが何度かあったが、業務には支障をきたさなかったそうです。

 企業が必要とする仕様を満たすことを前提に、コストの軽減を考えなければなりません。さもなければ、ネットワークの費用をケチったばかりに動かないコンピュータになってしまった、ということになりかねません。(鈴木T)