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 「サン・マイクロシステムズが圧倒的に強いのはISP(インターネット・サービス・プロバイダ)市場。しかし,ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)市場の戦いはこれからだ」。日本アイ・ビー・エムの上口幸生サーバー製品事業部長はこう語る。「ASP向けサーバーは,非常に高い信頼性が求められる。サンは信頼性についてはリーダーとはいえない」(上口事業部長)。IBMは10月4日発表した新サーバー「e server」の信頼性をアピールし,サンを叩く考えだ。

 e serverの旗艦は,稼働率99.999%というzSeriesである。zとはダウンタイムをゼロにするという意気込みからとられた。「zSeriesは信頼性を維持するために数々の仕組みを備えている。一例として,zSeriesはビットエラーを修正する機構がプロセサの隅々にまで張り巡らされている。現行のサン製サーバーには,ここまでのエラー修正機能は盛り込まれていないから,信頼性に差が出る」(上口事業部長)。

 zSeriesは従来のシステム/390のことであり,価格はサンより高そうに思える。だが,上口事業部長によると,「1件当たりのトランザクション処理コストを計算すると,実はzSeriesが一番安い。このため,zSeriesを使ってASPをやろうとするベンダーが日米で出てきている」。

 一方,サンが圧倒的に強いISP向けサーバーの市場は,「インテル・プロセサとLinuxの組み合わせが今後は主流になる。サンより価格性能比が高いからだ」と上口事業部長はいう。e serverにおいて,インテル・プロセサを採用したサーバーは,xSeriesという名称になった。

 「ISPで主に使われるのは,フロントエンド用のサーバー。大量導入されるから,低価格かつ薄型でなければならない。こうしたフロントエンド用サーバーはダウンがあったとしても,別のサーバーで代替できる。個々のサーバーそのものの高信頼性はミッション・クリティカルなアプリケーションほどは要求されないから,xSeriesとLinuxで十分だ」(上口事業部長)。

 上口事業部長は,「e serverでサンを挟み撃ちする」という。「ミッション・クリティカルなアプリケーション領域に出ようとするサンをzSeriesで抑え,さらにxSeriesでサンが強かった領域を浸食する。UNIXサーバーとしてパフォーマンスが必要な案件には,e server pSeries(従来のRS/6000)をぶつける」。

 9月に来日した,サンのスコット・マクニーリ会長兼CEO(最高経営責任者)は,IBMについて「サーバーOSの種類が多すぎる」と皮肉った。上口事業部長の発言は,マクニーリ会長への反論と言える。とはいえ,よくよく見ると,e serverとブランドは統一したものの,その中はz,p,x,そしてiと四つのシリーズに分かれている。iSeriesは従来のAS/400である。つまり,もともとIBMが持っていたサーバー系列そのままだ。名前を変えただけで,サンに対抗できるのだろうか。
 
 今後,IBMの営業担当者は,どんな案件でもe serverを提案する。顧客の要請を聞き,要請にあったシリーズを提案するという。一見今までと何も変わらないようだが,上口事業部長は大きく違うと説明する。

 「信頼性を求めるお客様にはzSeriesを提案する。zSeriesは,Linuxも動くし,UNIXアプリケーションも移植されており,UNIXサーバーとほとんど変わらない。ところが,S/390と営業担当者が言った瞬間,『メインフレームはいらない』と商談が終わってしまう」。また,IBMの営業担当者が顧客の要請を聞くと言うより,自分の手慣れたマシンをいきなり提案してしまうこともあった。

 e server発表後は,「とにかくAS/400」,「やはりS/390」という営業はできなくなる。日本IBMの営業担当者が顧客の要請をきちんと聞き,適切なシリーズを顧客に説明できるかどうかで,サンを挟み撃ちにできるか,返り討ちになるかが決まることになる。(谷島 宣之=日経コンピュータ