ローソンが販売している「千と千尋の神隠し」のチケットや関連グッズの売れ行きが好調だ。同社は店舗だけでなく,インターネットや携帯電話といった複数の販売チャネルを駆使して,販売を伸ばしている。

 ローソンの店頭に置かれたマルチメディア端末「Loppi(ロッピー)」やWebサイト「@LAWSON(http://www.at-lawson.com/)」,iモード携帯電話向けのWebサイト「iLAWSON」の3チャネルで映画チケットや関連グッズの予約を受け付け,全国約7600カ所のローソン店舗で料金と引き替えに顧客に商品を引き渡す。前売りチケットは7月19日の映画公開前日までに32万枚を売り切った。音楽CDやパンフレットといった関連グッズは現在も販売中だ。

 3チャネルの販売比率は,Loppiが60%,@LAWSONが20%,iLAWSONが20%。閑古鳥が鳴いている他社のコンビニ店舗のマルチメディア端末とは違い,Loppiは同社の売り上げに貢献している。「チケットや関連グッズ単体の売り上げも大きいが,店舗への顧客集客効果はもっと大きい」(ローソンの藤阪誠新規事業本部新規事業サポート部主席)。

 ローソンは大手コンビニ・チェーンの中で唯一,マルチメディア端末の全店展開を1998年3月に終えている。Loppiの顧客への認知度は比較的高い。

 Loppiを使ったチケット販売は,すでにローソンの主力事業に成長しつつある。昨年度(2000年3月~2001年2月)のLoppiの年間売上高は396億円だったが,そのうちの6~7割をチケット販売で稼ぎ出した。ローソンはコンビニで唯一,傘下にチケットの専門会社「ローソンチケット」まで抱えている。そのノウハウを電子商取引(EC)事業に最大限活用して,強力なコンテンツを取りそろえている。

 今年度は「千と千尋の神隠し」の映画チケットを販売したり,人気バンド「GLAY」のこの夏の巨大ライブ・イベントのチケット33万人分を独占販売するなど,チケット販売がさらに伸びている。「今年度のLoppiの売り上げは450億円を確実に超える」(藤阪主席)見通しだ。EC事業だけ見ると,最大手のセブン-イレブン・ジャパンやファミリーマートの同事業規模を凌ぐ。

 GLAYのチケット販売では,店舗やテレビ,雑誌での告知活動だけでなく,全国を走り回るローソンの物流トラックにまでGLAYの看板を張り付けて,ライブを宣伝して回った。「ローソンの資産は店舗やインターネットだけじゃない。トラックまで総動員してはじめて,クリック&モルタルが真価を発揮できることが分かってきた」(藤阪主席)。

川又 英紀=日経コンピュータ