NTTは10月26日,IPネットワークを介して接続する2台のパソコン間で,圧縮していないハイビジョン映像を転送する技術を発表した。1.5Gビット/秒の通信速度を実現する。高速通信ネットワークとパソコンを組み合わせて,ハイビジョン画像を高画質のままリアルタイムに転送できる。

 パソコンとIPネットワーク技術を使って,高画質のハイビジョン映像をリアルタイムに長距離転送するのは,今回発表した技術が世界初。「当社が開発した技術を利用すれば,DVDレベルの画質の映画なら150~300本を,BSデジタル・ハイビジョンの番組なら70本のデータを,IPネットワークを使って同時に転送できる」と,技術開発に携わったNTT未来ねっと研究所ネットワークインテリジェンス研究部の小柳恵一部長は説明する。

 今回転送に利用したのは,動作周波数1GHzのPentiumIIIを2個搭載したパソコン(OSはLinux)。主記憶容量は512Mバイト。2.4Gビット/秒の高速ネットワーク・インタフェースと,ハイビジョン映像を取り込むための専用インタフェースを搭載している。インタフェースと主記憶は66MHzのPCIバスで結ばれている。要は,市販のパソコンである。そのパソコンに,映像をIPパケットに変換するためのソフトウエアとドライバを搭載する。ソフトウエアは,メモリと各インタフェース間でデータを高速にやり取りするため,複数スレッドによる並列処理ができるように設計されている。

 ネットワークを転送するためのIPパケットのサイズは,イーサネットの約40倍にあたる64Kバイトに設定している。パケット・サイズを長くするのは,映像を高品質のまま転送するため。転送するルーターや端末のパケット処理に余裕ができるので,転送時のパケット・ロスが大幅に抑えられる。

 実験によると,64Kバイト長のパケットを使ってハイビジョン映像を転送した場合,1時間に1回しか映像のコマ落ちが発生せず,画質にはほとんど影響がなかった。ギガビット・イーサネットで同じ映像を転送すると,1秒間に2,3回コマ落ちが発生した。

 発表に先駆けて,NTTは約20キロ・メートル離れた距離で新技術を利用したデータ転送実験に成功している。実験は,東京都武蔵野市にあるNTTの研究所と東京都調布市にある電気通信大学の間で行われた。実験用のIPネットワークは,2.4Gビット/秒の高速通信が可能なNTTの技術「MAPOS」を搭載したIPネットワーク・スイッチと,光ファイバで構築した。

西村 崇=日経コンピュータ