NTTグループの研究機関であるNTT未来ねっと研究所(http://www.onlab.ntt.co.jp/)は11月26日,ソフトウエアを入れ替えるだけで機能を追加・変更できる無線装置である“ソフトウエア無線機”を開発したと発表,試作機を公開した。試作機は,ソフトを入れ替えることで,PHSとしても無線LAN端末(無線LANカード)としても利用できる。こうした機能を持つソフトウエア無線機の公開は世界初という。

 試作機は,マイクロプロセサ(PowerPC750,動作周波数400MHz),デジタル信号処理プロセサ(DSP,テキサス・インスツルメンツ製)に加えて,PPP(プリポスト・プロセサ)を搭載。PPPは,デジタルに変換された直後の信号処理を行う。試作機では,PPPの回路をソフトウエアによって書き換えられるようにした(プログラマブル化した)うえ,独自の工夫によって回路構成の簡易化や動作の高速化を図った。これにより,PHSや無線LANなど,帯域幅の異なる複数の無線方式に対応できるようにした。

 試作機の大きさは,高さ3Uのラック型サーバー程度。リアルタイムOSのVxWorksを搭載する。機能を変更するためのソフトウエアは,無線を通じてダウンロードできる。TCP/IPベースの通信プロトコルを使用し,三菱電機とNTTが共同開発した128ビットの暗号化手法「Camelia」によりセキュリティを強化している。同研究所の梅比良正弘ワイヤレスシステム研究グループリーダは,「今回はPHSと無線LANに対応する試作機を作った。帯域幅が中間に位置する第3世代携帯電話についても技術的には可能な域に達している」と話す。

 このソフト無線機が小型になって製品化されると,複数の通信機器を持ち歩く必要がなくなるので,モバイル・コンピューティングの普及に弾みをつける可能性が大きい。ただし,梅比良グループリーダは,「製品化できるレベルに達するには,短くても4~5年を要するだろう」と予想する。試作機で使用しているプロセサの発熱量が大きいうえ,現段階ではPHSや無線LANといったモードごとに異なるアンテナや送受信機を用意する必要があり,小型化が困難であるからだ。さらに,通信機器は出荷にあたって機器ごとに政府機関などに登録する必要があるが,ソフトによってモードを変更した場合の登録をどうするかという課題をクリアしなければならないという,制度上の問題もあるという。

森 永輔=日経コンピュータ