「第3世代携帯電話(3G)市場は,行政の方針次第で拡大どころか3分の1に縮小することもありえる」。アクセンチュア(http://www.accenture.com/jp/)で通信業統括パートナーを務める程近智(ほど ちかとも)氏は1月23日,10年後の移動通信業界に関する共同研究の成果発表でこう語った。

 この研究は,アクセンチュアと国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM,http://www.glocom.ac.jp/)が共同で進めているもの。今回の発表で,移動通信業界が今後10年でどのように変ぼうするのかを示す4種類のシナリオが明らかになった。
 
 中でも,最も市場が縮小するとみられるのは,「地方自治体などが固定通信の余剰帯域を利用して,無線VoIP(ボイス・オーバーIP)サービスを無料で提供するような施策を打ち出す」というシナリオ。この場合,既存の携帯電話キャリアの顧客も,3G以外の無線サービスを有料で提供する新規の移動通信事業者の顧客も,その多くが無料サービスに流れてしまう可能性が高い。その結果,「移動通信のトラフィック市場は現在の6兆円から10年後には2兆円程度に落ち込んでしまう」(程パートナー)。

 逆に,最も市場が拡大するのは,「携帯電話キャリアが音声通信市場,新規の移動通信事業者が無線ブロードバンド市場,というように共存共栄の市場を形成する」というシナリオ。ただし,この場合でも規模はせいぜい10兆円程度にしか拡大しない見込み。「通信速度が100倍になったから通信料を値上げする,というわけにはいかないからだ」(程パートナー)。GLOCOMの山田肇教授は,「市場規模が10兆円程度では,3Gもしくはその後の新方式携帯電話のコスト負担には耐えられないのではないか」と予想する。

 GLOCOMの山田教授は,「携帯電話キャリアは3G市場を高く評価しすぎて,過剰投資に陥っている。市場規模は通信速度の発展ほど広がらない,という認識を持って事業計画を考え直すべきだ」と警鐘を鳴らす。アクセンチュアとGLOCOMは,市場を左右する要因が変化したタイミングで再度調査を実施する予定である。

鈴木 孝知=日経コンピュータ