「ユーザー企業側がもっとシステムを発注するための能力を高めないと,システム・インテグレータが甘えるだけ。ユーザー側の怠慢はもっと指摘されてしかるべきだ」--厳しい意見を呈するのは,プロジェクト管理のコンサルティングを手がけるプロシード(http://www.proseed.co.jp/)の西野弘代表取締役だ。

 同様の指摘をするのは西野氏だけではない。中堅のユーザー企業を中心にシステム・コンサルティングを手がけているクレストコンサルティング(http://www.crest-con.co.jp/)の岩井孝夫社長も,「ユーザー企業側の認識が甘いためにシステム構築に失敗する例が,相変わらず後を絶たない。それどころか,ここ最近増加の傾向にある」と証言する。

 米大手システム・インテグレータEDSの日本法人に勤務していた経験のある,ネットエンズ(http://www.netens.co.jp/)の谷本勲社長は,EDS時代のエピソードを次のように語る。「『米国のユーザーに比べて,日本のユーザーは発注者としての意識が低い』。このようなことを,上司から頻繁に聞かされていた。その上司には『お客様もシステム構築にもっと真剣に向かい合うべきだと,きちんと進言してこい』とよくハッパをかけられた」(谷本社長)。

 もちろん,インテグレータが誠意を持ってシステム構築に全力を尽くすべきなのは言うまでもない。しかし,システム構築の失敗は,発注者側にも問題がある。「動かないコンピュータ」だけでなく,システム構築のコスト高もユーザーのコントロール力不足に起因するところが少なくない。「昔から言われていることだが,もう一度進言したい。お客という立場をむやみに振りかざしても,良いシステムは作れない。結局困るのはユーザー企業自身だ」(プロシードの西野代表取締役)。

 西野氏によると,米国政府では情報システム調達の責任者に対して,まず最初に20週間分の体系的な調達方法を勉強させているという。「もちろん机上の教育がすべてではないが,これだけのボリュームがあるほどシステム調達というのは奥が深く重要な業務。にもかかわらず,日本の政府や企業はこの認識が少ない」(西野氏)。日本では特に官庁についてシステム調達の能力を指摘する声が大きいが,官民両方へのコンサルティングを手がけている西野氏は,「民間企業も同じ状況にある」という。

 とはいえ,ユーザー側も急に発注者として必要な見識や能力を会得できるわけではない。そこで,ユーザー向けの教育サービスを利用するのも一つの方法だ。プロシードでは,5月10日から「IT調達カレッジ」を開催する。日米英の専門家が半年間に渡ってプロジェクト管理の手法や,国際標準に沿ったシステム調達手法を講義。「発注者としてどうシステム構築をコントロールすればよいか」を学べるようにする。より実践的な教育プログラムにするため,実際に米国防総省でシステム調達に関わっていた講師3名を招く。料金は一人当たり300万円。「手前味噌で恐縮だが,こちらも言いっぱなしではいけない。ユーザーの能力向上に貢献したい」(西野氏)。

(高下 義弘=日経コンピュータ)